コロナ禍で自己負担増はもってのほか!
75歳以上の医療費負担2倍化を阻止しよう

受診抑制を加速、医療を受ける権利を侵害する健保法改悪案
 菅政権は、75歳以上の医療費窓口負担を、現行の1割から2割へと2倍にする健康保険法改悪案を、今国会で成立させようとしています。
 改悪案は、単身世帯は年収200万円以上、夫婦など複数世帯は同320万円以上が対象で、2022年10月実施を目論むものです。すでに「現役並み」所得の高齢者は、3割負担を押しつけられています。今回の改悪法が成立すれば、75歳以上(約1815万人)の3割近くの人が2割以上の自己負担を強いられることになります。多くの病気を抱える高齢者にとって、負担増は本当に死活問題です。
 いま、コロナ感染拡大の第4波の只中で、感染者数は高止まりし、重症者と死亡者も増え続けています。感染拡大の波がいつまで繰り返されるかも分かりません。多くの人々が、自らの命と健康が脅かされることに不安を抱き、生活困難にも直面しています。その中で、患者負担を倍増する法案を国会審議し、押し通そうとするなど論外です。絶対に許されません。
 政府・与党は、高齢者の負担増は現役世代の「負担上昇を抑える」「保険料を軽減する」ためだと言っていますが、全くのデタラメです。結局、高齢者の医療費負担を増やしても、現役世代の保険料はほとんど減ることはありません。ただ国の医療費支出=公的負担が減るだけです。つまり国の医療費負担を削減することが目的なのです。
 すでに自公政権による消費税増税、年金減額や介護保険料引き上げ、医療費自己負担増など、この間の相次ぐ負担拡大で、身体の調子が悪くなっても受診せず我慢する、慢性疾患の治療や投薬を中断するといった受診抑制が広がっています。現在ではコロナ感染拡大が追い打ちをかけるように、ますます患者を医療から遠ざけています。今回の窓口負担を2倍化は、受診抑制をさらに促進することは間違いありません。病気の早期発見・診断・治療が一段と困難になり、病気の悪化・重篤化をもたらします。「国民皆保険」など名ばかり、医療を受ける権利はますます狭められようとしているのです。
 コロナ感染に見舞われたこの1年、政府は検査体制の拡充や入院・療養体制整備など、人々の命と健康を守る対策を全くといって良いほどやってきませんでした。経済最優先、今では東京オリパラ強行など、人々の命と健康は脇に置いたままです。今回の患者負担増法案は、まさにこのようは菅政権の「自助」=自己責任ありき、公的責任放棄と命・健康の軽視政策の端的な表れです。

病床削減法案の成立糾弾
 患者負担増だけではありません。政府は、コロナ禍で病床が足りず、全国で4万人もの感染者が自宅待機・療養を強いられる中で、病床をさらに削減する改悪医療法を5月21日、成立させました。自民・公明・維新だけでなく、国民民主も賛成しました。
 成立した「病床削減・病院統廃合推進法」は、病床削減した病院に、消費税から195億円を財源に給付金を支給するというものです。しかも病床稼働率が高いほど補助単価を高くして削減を誘導しようというのです。日常的に医療ひっ迫を作り出すことにもなる、とんでもない医療破壊政策です。公立・公的病院の再編統合計画(436病院リスト)も、そのまま残っています。
 すでに1996年から2021年にかけて全国で実に32万床以上が削減されてきました。感染症病床についても、陰圧設備のある結核病床がこの20年間に2万床以上も減らされています。信じられないことですが、コロナ禍で病床不足が深刻化するこの1年間(昨年2月末から今年の2月末まで)だけで20,888床も削減されているのです。今回成立した医療改悪法は、さらにこの病床削減を加速しようというものです。なおも続くコロナ感染拡大、今後も襲ってくることが確実な新興感染症に全く逆行するもの、人々の命と健康をないがしろにする新自由主義的政策に他なりません。
 しかし医療現場や地域から、病床削減反対、病院の統廃合反対の声を上げ、世論を巻き起こすことで病床削減を押しとどめることは十分に可能です。

後半国会、健保法改悪案を廃案に
 今回の負担増を許せば、さらなる負担増を次々と招くことにつながります。2割負担の所得基準は政令で決めるとされているため、政権が好き勝手に対象者を拡大できます。さらに介護保険においても2割負担、3割負担を目論んでいます。高齢者の医療費負担は、せめて1割負担に戻し、原則ゼロへと政策転換すべきです。
 菅政権は、ドサクサ紛れに反人民的悪法を次々と強行しようと暴走し始めました。国民投票法や重要土地調査規制法、そしてこの高齢者2割化法案を後半国会の柱に据え、無理やり成立させようと動いています。
 しかし今、もっとも最優先で行うべきはコロナ対策です。人員も財政も、持てる全ての資源はここに集中的に投入すべきです。少なくとも、これに反する法案はすべていったんは脇に置くべきです。すでに入管法改悪は、全国各地からの反対世論の高まりで断念させることができました。これに続いて、高齢者の医療費負担を倍増する健保法改悪案も廃案へと追い込みましょう。

2021年5月25日
リブ・イン・ピース☆9+25