リーフレット

「何が秘密?それは秘密」 特定秘密保護法を廃案に!

情報を調べたり、知ろうとすると犯罪に!?
戦争準備のための警察国家・監視国家づくり

米軍と一緒に戦争できる体制をつくるための軍事立法
 今国会で審議されている特定秘密保護法案は国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案とセットです。日本版NSCは首相と官房長官、防衛相、外務相に自衛隊トップの統合幕僚長などが参加し、そのもとで実務を担う「国家安全保障局」には、10数人の現役自衛官の指導部が入るという文字通りの戦争司令塔です。自衛隊が米軍と一緒に海外派兵され戦争に参加できるように、軍事機密保護を米国並みにするというのが最大の目的です。まさに解釈改憲=集団的自衛権行使と一体のものです。そのため、知られてはまずい情報を「特定秘密」に指定し国民の目から隠してしまおうというのです。それは軍事情報に限らず、あらゆる情報に波及します。特定秘密保護法案は「防衛」「外交」「特定有害活動防止」「テロ活動防止」の4分野で「特定秘密」を決め、それを漏らしたり、聞き出そうとした人を最高10年の懲役を科すというのです。

「何が秘密かは秘密」 情報を知ろうとする市民を監視し、犯罪者に
 今でも公務員の秘密漏洩罪や、「防衛機密」などがありますが、これはその秘密を扱っている職業人を罰するものてす。これに対して、知ろうとした人、知ってしまった人、知らずに教えてしまった人さえ罰することができるというのが新しい法律の大きな特徴です。
 つまり、市民がいろいろな形で情報を得たり、その情報をもとに政府を批判したり、政府が隠している情報を開示するよう求めたり、言論・出版活動をしたり、学問・研究をしたり、さまざまな活動が全て監視と刑罰の対象になります。しかも特定秘密保護法違反とされた場合、「何が秘密かは秘密」であるため、自分が何に違反し何で逮捕されたかもわからないという状況が生まれるのです。

次から次へと犯罪が追加 無制限の秘密対象
 この法律の恐ろしいところは、法律が成立した時点では、何が犯罪かは決まっておらず、行政機関の長が「特定秘密」と指定することにより犯罪行為が決まることです。“犯罪内容とそれに対する刑罰があらかじめ法律で決められていなければならない”という罪刑法定主義に反し、際限なく指定される危険があります。しかも特定秘密と指定されたということは一切明らかにされません。秘密指定の更新も自由で、秘密文書保存の義務もなく、勝手に廃棄できます。特定秘密はすべて、永久に闇から闇へ葬り去られるということになります。秘密指定が正当かどうかを監視する機関もありません。

膨大な数の特定秘密
 現行の「特別管理秘密制度」で特別秘密に指定されているのは41万件あります。これがそのまま特定秘密に指定される可能性があります。行政機関にとって都合の悪いあらゆる情報が特定秘密の対象となります。
特定秘密保護法は戦前の軍機保護法に酷似
 戦前、軍事情報を統制する「軍機保護法」という法律があり、軍事に関する一切の情報が秘匿された。宮沢・レーン事件は、北海道大学生の宮沢弘幸さんが「樺太に旅したときに偶然見かけた根室の海軍飛行場を、友人のレーン夫妻に話した」ことで軍機保護法違反で逮捕・有罪となり投獄、戦後釈放後まもなく病死したという悲惨な事件である。8月の朝日新聞「声」欄には「沖の軍艦を数えただけでスパイ容疑で捕らえられたという話もあった。知ったことを言おうものなら、すぐに捕らわれた」との86歳女性の投書がある。
 例えば、現在、輸入した原発燃料の輸送経路、米空軍の日本国内の演習経路、登山の安全のための目印となっている送電鉄柱の所在場所等々はすべてテロ防止の口実で秘密です。もしこれが秘かに特定秘密に指定されれば、仮に登山家が自分で送電鉄柱を調査・公表した場合、特定秘密保護法違反に問われる危険があります。

逮捕されたら防御手段がなくなる
 特定秘密保護法違反で逮捕・起訴された場合、被告は防御のための手段がなくなります。具体的に何が特定秘密なのか、被告の行為がどう秘密保護法に抵触するのか等について審問し反論することはできなくなるからです。弁護士も刑罰の対象となり、行政機関の長が許可しない限り裁判官すら何が特定秘密か知ることができないことから、弁明したり、真偽を質す方法がなくなります。だから、検察官は被告の行為が特定秘密に抵触するというだけで起訴ができ、被告の反証なしに一方的に有罪とできるのです。


広範囲な守秘義務者と厳しい国家統制

 特定秘密を取り扱う人は秘密取扱者(秘密作成者または秘密取得者)と認定され、国家統制による厳重な守秘義務が課せられます。秘密取扱者は具体的には、(1)国の行政機関、(2)独立行政法人、(3)都道府県警察、(4)行政機関等から事業委託を受けた民間業者・大学等です。しかし一般に医薬品、コンピューターやロボットなどの最先端技術をはじめ一切のものが軍事転用可能であり、「大量破壊兵器」につながっています。したがって、いかなる研究成果であろうと国家統制が可能であり、その公表には厳しい規制がかけられる危険が出てきます。憲法が保障する学問の自由(第23条)や出版言論の自由(第21条)が踏みにじられます。
 他方、大学や独立行政法人などで「特定秘密」を口実に秘匿され、軍事研究などが秘密裏に進む危険性があります。

秘密取扱者の「適正評価」は  プライバシーに土足で踏み込む
 一方、特定秘密取扱者は厳しい「適性評価」を受けなければならず、プライバシーに土足で踏み込まれます。「適正評価」事項は以下です。(1)「特定有害活動」やテロにかかわっていないか、(1)犯罪や懲戒の経歴、(3)情報の取扱いの経歴、(4)薬物の乱用、(5)精神疾患、(6)飲酒の節度、(7)信用状態(借金やローン)。そして評価対象者とその家族(両親、配偶者、子ども、兄弟姉妹)、さらに配偶者の家族や親戚縁者まで、氏名、生年月日、国籍及び住所などが調べ上げられます。検査はおのずと交友関係や恋人にまで及ぶでしょう。しかも、これらの調査基準も調査対象も非公開で知人や金融機関、医療機関、学校等への照会も可能です。この照会に際しては本人の同意を得るのが適当であるとされていますが(有識者会議報告)、実際にはその保障はありません。
 仮に身元調査をされるのが嫌で適性評価を拒否したら、仕事を奪われることになりかねません。だから、「本人の同意」などは形式的なもので、とりわけ会社員は身ぐるみ剥がされ、監視のもとで仕事をし続けなければならなくなります。

 現在でも情報公開によって行政から出される文書は黒塗りだらけ。右の写真は「日の丸・君が代」起立・斉唱に関する大阪府教育委員会からの校長宛通達(2012年開示)。
特定秘密保護法ができれば、情報公開されないどころか、公開を要求するだけで刑罰の対象になる危険がある。

漏洩だけでなく、情報取得に関する一切が犯罪となる危険がある
 秘密取扱者の故意・過失による秘密漏洩と特定取得行為は10年以下の懲役の厳罰に処すとなっています。
 特定取得行為とは、財物の窃盗・不正アクセス・不正侵入・だまし・脅迫・暴行等の犯罪行為による特定秘密の取得です。また犯罪行為でなくても「著しく不当な方法」と認定されれば処罰されます。これは西山事件(次頁コラム参照)の際、最高裁が不倫関係を通じてのコピー取得を有力な有罪論拠とした悪判例に基づくものです。

相談したり、呼びかけたりするだけで犯罪に
 未遂・共同謀議・教唆(きようさ)・扇動・国外犯のすべてが有罪となります。通常の刑法では、「人を教唆して犯罪を実行させた者」が刑罰の対象になりますが、特定秘密保護法では「共謀し、教唆し、または扇動した」だけで、実行に移されなくても罰せられることになります。
 電話で役所に情報を教えてほしいと尋ねたり、チラシで「明らかにせよ」と訴えたり、集会・デモでアピールしただけで、「教唆・扇動した」として犯罪になる可能性があります。
 これに加えて密告に対する刑罰減免規定があります。市民グルーブのメンバーを執拗に追及して「自首」させたり、公安警察がスパイを送り込み「共謀」させた上で自首するなどでグループを一網打尽にすることが想定されています。

マスコミの萎縮、自主規制をますます進める
市民やメディアから暴露されるまで政府が隠していた情報
○福島原発事故時の緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムSPEEDIの値
○復興支援予算を「復興」と全く関係のない事業に流用
○オスプレイの飛行ルート。オレンジルートなど6ルート(未だ公式には認めていない)
○日本軍「慰安婦」強制連行の証拠(東京裁判)
 政府案の最終段階で、マスコミの「取材の自由」が追加されましたが、「保障」ではなく「十分に配慮」にとどまりました。メディアの取材活動に自主規制の圧力がかかることは避けられません。だから、マスコミ側は、常に秘密保護法違反に該当しはしないかと、ビクビクして取材を行わなければならず、当然、取材活動に自主規制のプレッシャーがかかり、強い萎縮が生じます。さらに、マスコミ会社には属さないフリー・ランサーの記者は、そもそも「報道関係者」と認められなければ「取材の自由」はありません。言論・出版を保障する憲法第21条の重大な蹂躙です。

政府を監視したり、批判する市民運動ができなくなる
 国家権力にとっては秘密保護法違反で逮捕するのが重要なのであって、実際に被告が秘密保護法に抵触しているかどうかは問題ではありません。脱原発運動をしている市民グループがプルサーマルMOX燃料の輸送ルートや陸揚げ港湾情報を明らかにしたり、沖縄基地に反対している市民がオスプレイの飛行写真を公開した場合、それを「秘密保護法」違反を口実に逮捕することが可能になります。仮に嫌疑不十分で釈放されたとしても、あるいは裁判の結果として無罪になったとしても、長期にわたって拘留され、社会的制裁を受けるという恫喝が、市民の「言論・表現の自由」を圧殺し、メディアを自粛させることにつながっていくのです。




西山事件と日米密約
 1971年、当時の「毎日新聞」記者の西山太吉記者が、沖縄返還費用の一部を日本側が肩代わりするという外務省密約電報を暴露した事件。政府は一貫して秘密の存在を否定し、逆に西山記者は公務員違反で有罪に。最高裁は、西山記者が親しくしていた外務省の女性事務官を通じて電報のコピーを入手したことから「社会通念上是認できない行為」による取得という理由で有罪判決を下した。
 この他、佐藤・ニクソン会談における沖縄返還後の「基地自由使用」密約事件もある(若泉敬が暴露)。
 現在、日米合同委員会によって取り決められたおびただしい数の密約が存在し、日々追加されている。「特定秘密」が指定されれば、これらを暴露したり政府を追及することは重犯罪行為となる危険がある。
警察は特定秘密を使って何でもできる
 行政が裁判所や国会よりも優位に立ち、さらに警察が強大で広範な権力をもつことになります。一方的に秘密保護法違反の疑いだけで捜査・逮捕することが自由自在になるのです。まさに警察国家・暗黒国家になってしまいます。
現在でも様々な冤罪事件が起こっていますが、さらに冤罪の温床になる危険性を持っています。特定秘密でないのに特定秘密だとウソを言って逮捕することもできます。誤認逮捕をしたとしても、誤認を認めず、「特定秘密」と言い張り罪をでっち上げることも可能です。
 それだけでなく、市民の間で疑心暗鬼が渦巻くようになるでしょう。

あらゆる情報を得ることは主権者である国民一人一人の権利
 秘密保護法は、国民主権、基本的人権の尊重、戦争放棄の憲法3原則を侵害するものです。「知る権利」は憲法で保障された基本的人権の重要な一つであり、国の暴走を許さないために、主権者である国民一人一人があらゆる情報を得て判断するために、「国民主権」の原理から人民が本質的に持っているものです。
 国民から情報を隠して軍事・外交政策を進めたいというのは、国民を敵視し、米国や支配層の利害のために権力を独占行使しようとすることにほかなりません。
 国がどのような情報を得、どのような政策をとるかは、すべて国民に公開されなければならず、一切の軍事機密・外交機密が存在してはなりません。

2013年11月1日
リブ・イン・ピース☆9+25