イスラム原理主義を使ったアサド政権転覆を糾弾します 12月8日、シリア・アサド政権はイスラム原理主義グループ・シャーム解放機構HTSを中心とする反政府勢力によって転覆され、崩壊しました。主要なメディアはこの出来事を「シリアの独裁政権が打倒され、民主主義が復活した」と賛美する報道をしました。それは全く間違いです。私たちは政権打倒が正義であるかのように主張する宣伝、人々に誤った印象を意図的に与えるための宣伝に反対します。 今回の政権転覆の本質は、米国、トルコ、イスラエルが自らの息のかかったイスラム原理主義者や傭兵勢力を使って代理戦争をしかけ、反米反帝の立場のシリア政府を打倒したことにあります。メディアの大半はそのことを隠しています。 13年間に及ぶ米国のシリア政権打倒の策動 2011年に「アラブの春」に影響されたシリア民衆の不満に乗じて、米はシリア政府に対して外から侵略戦争をしかけました。トルコや湾岸反動王制がこれを支援しました。米軍が参戦し、激しい空爆を行ったのをはじめ国外の亡命者、国内のイスラム原理主義武装勢力、アルカイダ、トルコの影響下の武装勢力などに資金と武器を与えダマスカスに向かって進撃させました。これはシリアの「内乱」ではなく、外国勢力による侵略、代理戦争でした。 アサド政権は窮地に立たされます。各勢力が勝手にシリアを切り取ろうとしました。米軍は北東部の油田地帯を占領し、石油を略奪しました。クルド独立派(シリア民主軍)と結んでユーフラテス川以東の広大な地域を支配します。亡命者グループやイスラム原理主義グループもダマスカスに向かって攻め込みますが、追い返されます。変わってイスラム国ISISが戦力を拡大しシリア政府に敵対します。米軍はISISを爆撃すると称して、実際にはシリア政府軍を攻撃し、侵略を続けました。トルコはクルド独立派を攻撃するとともにシリア北部の国境地帯に攻め込みシリア国民軍を名乗って占領します。 外国からの侵略に弱体化し、崩壊しかけたシリア政府を助けたのはロシアであり、ヒズボラやイラン民兵など抵抗枢軸部隊でした。2015年にようやくシリア政府は、多くの地域を占領されながらも侵略を押さえ込みました。 目的は反米反帝政権打倒とパレスチナ・抵抗枢軸への打撃 敗北した反政府グループはシリア北部のイドリブ県に逃げ込みます。この部隊を保護し、武器を与え、資金を与えたのは米国や英国の情報機関、トルコ等です。政権転覆の主力となったHTSは、イスラム原理主義武装勢力で元々「ヌスラ戦線」を名乗るアルカイダの分派でした。彼らは米やトルコの庇護の下で保護され活動を保証されてきたのです。 今回のアサド政権転覆の目的は、第1に反米反帝の目障りなアサド政権打倒でした。それに加えて第2に、シリアを通るイラン・イラク・ヒズボラの補給路を断ち、イランとヒズボラに打撃を与えることです。イスラエルが軍事的にヒズボラを壊滅できなかったので、米国が戦略転換しレバノン停戦直後に進撃を始めさせたのです。シリア政府を打倒することでハマスと抵抗の枢軸に打撃を与え、中東における米国の覇権を再確立しようとする起死回生の策でした。この戦略目標そのものが、主犯が米国である事を示しています。 トルコの動機は反パレスチナ、反抵抗の枢軸ではありません。トルコは、@シリア内に拠点を作ったクルド独立派への攻撃、Aシリア領土の略奪、B国内の大量のシリア難民の送り返しなどを目的に参加し、米に協力したのです。 米国は石油略奪・経済制裁でシリアをボロボロにした 米国は2011年から13年間にわたって執拗にシリア政権打倒を追求し続けました。米軍がシリアの主要な油田地帯を押さえ、石油を略奪することでシリア復興の資金源を絶ちました。さらにシリアに経済制裁を加え、貿易ができなくする事で復興を阻止し、経済に打撃を与え続けました。食料生産に必要な農地の多くもまた奪われたままでした。極めて深刻な包囲の状況の中で、シリアはすでに困窮し、ボロボロにされていました。人民生活の窮乏化のもとで政府に対する信頼は揺らぎ、資金不足で軍は弱体化し、士気が低下しました。今回の急速な崩壊の原因です。アサド政権は米国によってすでに半ば倒されていました。 イスラエルはシリア全土への空爆、ダマスカスへの進軍をやめろ もう一つの主犯はイスラエルです。イスラエルは13年どころかそれ以前からシリアを好き放題に爆撃してきました。米と結託し、米の庇護のもとに、米に代わってシリアを攻撃し続けたのです。シリアの軍事施設だけでなく、ハマス、ヒズボラ、イランの高官を次々と爆殺してきました。国際法など全く無視した暴虐なイスラエルの性格が表れています。 反政府勢力が進撃はじめるやいなやイスラエルはベイルートやシリア軍のを攻撃して援護しました。住民の被害など全く無視してシリア軍の化学兵器貯蔵所を爆撃したと言われています。シリアの軍事力を壊滅させ長期にわたって再起できなくするために、ダマスカス陥落後に2日間にで480カ所を空爆し、シリア軍の基地と兵器、ラタキアの海軍基地と艦艇、航空基地を破壊しまくりました。現在では不当に占領しているゴラン高原から出撃し、ダマスカスに向かって地上軍を侵攻させています。すでに10数キロまで接近しています。新たに新しい領土をシリアから奪い取ろうとしているのです。 傀儡国家やシリア分割、領土略奪に反対します マスコミの報道とは裏腹に、アサド政権の崩壊は民主主義の復活などではありません。シリアの新しい支配者はイスラム原理主義グループHTSです。米国とトルコや支援者たちは自分たちが育て唆しておきながら、彼らが自分たちに従わずイスラム原理主義で行動するのではないかと危惧と不安をますます高めています。北部ではクルド独立派のシリア民主軍に対してトルコ軍と子飼いのシリア国民軍が攻撃を仕掛けています。米軍は石油権益を手放すつもりがありません。ダマスカスへは10数キロの所までイスラエル軍が侵攻していますが、誰も抵抗も反撃もしません。外から干渉するグループによってシリアがバラバラにされています。 私たちは、外国による傀儡国家の確立やシリア領土の分割、略奪に反対します。私たちはどんなに困難であってもシリアの人民が真の民族主権を再び確立する為に立ち上がることを期待します。 米国の中東での軍事覇権のための戦争、イスラエルの植民地支配のためのガザ攻撃に反対します。戦争国家イスラエルに直ちにシリア攻撃・大規模空爆をやめ撤退することを要求します。 2024年12月12日 |
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