パレスチナ連帯シリーズ(その10)
休戦延長交渉を誰が拒否したのか?
米・イスラエルの共謀・共犯関係を暴露する

避難場所に集中的爆撃〜わずか1日で700人を虐殺
 イスラエルは12月1日午前7時(現地時間)、7日間の中断の後、ガザへの空爆を再開しました。ガザ保健省は12月3日、空爆再開後、イスラエルがガザ地区南部のハーン・ユニス、ラファなどで僅か1日で700人(!!)を殺戮したと訴えました。この南部地域は、一時休戦以前にイスラエル軍が避難せよと指示したところです。住民の避難を誘導してそこを爆撃したのです。文字通り、血に飢えたイスラエル・ファシスト国家による大虐殺以外の何物でもありません。中でもガザ市中央部アル・シュジャイヤは残酷極まりない光景だといいます。断じて許すことはできません。
 瓦礫の下にはまだ多くの人が残されたままです。10月7日以降、死者総数は15,237人(12/3)になりましたが、負傷者だけで4万1000人を超えており、行方不明者を含めると犠牲者はもっと増えます。とてつもない人道的大惨事をわざとつくりだそうとしているのです。人道援助や食料・燃料・電気を完全に阻止し、居住場所を空爆で廃墟にして住めないようにし、雨や寒さが増す中で、暖を取ることもできないまま、一挙に桁違いの犠牲者を出そうというのです。すでに病院の殆どを爆撃で破壊し、医師や看護師を殺しまくりました。援助の国連職員も殺しまくりました。虐殺を報道するジャーナリストも殺しまくりました。なぜイスラエルだけがこんな非道を許され、罰せられないのでしょうか。
 このまま放置すれば、大規模な飢餓や病死が一気に増えます。爆撃による数百人規模を桁違いに上回る、文字通りの人道的大惨事です。人道的大惨事を許すなの声を挙げましょう。さらにパレスチナ連帯行動を強めましょう。

「死の地帯」: イスラエルによるガザ空爆は24時間で700人以上が死亡した(Common Dreams、2023/12/03)
シュジャイヤの虐殺事件:50棟の建物が被弾、数百人の死傷者が出た

メディアは根拠なくハマスに責任転嫁
 日本のメディアは、一斉に「ハマスが約束を反(ほ)故(ご)」なる米国務長官ブリンケンのデタラメな言い分を垂れ流しました。米国が大量虐殺の共謀者であることは周知の事実です。シュジャイヤを含む700人もの大虐殺などを無視して、またもや「ハマスが悪い」と言うのです。また、まるで双方が休戦延長したかったのに、折り合いがつかなかったかのように報道しています。「ガザ休戦交渉決裂 人質解放 認識に溝」(毎日12/4)、「ガザ戦闘再開 人質解放 合意至らず」(読売12/2)。後述するように、イスラエルが休戦合意を破って虐殺再開に踏み切ったのです。

米国務長官「ハマスが約束をほご」 ガザでの戦闘再開受け批判
攻撃再開「ハマスのせい」 米国務長官、戦闘休止終了で
ガザの戦闘再開…イスラエル、ハマスが「協定」破りロケット弾発射と主張

 そもそもメディアは、これだけの明白な大量虐や人道的危機を起こしている米国とイスラエルを全く非難しません。「虐殺」や「残虐」は米・イスラエルには絶対使わないのです。まるで自然災害かのように、淡々とイスラエルの空爆と作戦を報じるだけです。「ガザ南部空爆強化、イスラエル地上侵攻へ準備か」(読売2023/12/04)、「イスラエル地上作戦拡大か」(毎日2023/12/02)。しかし、ハマスには「残虐」「虐殺」を平気で使うのです。「イスラエル軍 ハマスによる残虐行為だとする映像を公開」(NHK10/26)、イスラエル軍がハマスの「残虐」映像公開(毎日10/24)、「米国務長官、ハマスの残虐さ『人々の記憶後退に衝撃』」(日経11/4)。恥を知れと言わねばなりません。

休戦延長はどのように終わり、誰が拒否したのか?
 休戦の破綻は、イスラエルが交渉継続を拒否したからです。ハマス政治局メンバーであるエザト・アル・レシェクは、人道的休戦の不延長の全責任はイスラエル占領軍にあると非難しました。
 ハマス側は、ガザで拘束されている高齢の民間人男性人質の解放条件について交渉したかったが、イスラエル側は、解放すべき女性人質がまだいると主張した。ハマス側は、女性人質は兵士であり、イスラエル民間人の解放のみを認めた当初の休戦協定の対象ではないと反論した。ハマス側は再交渉を望んだが、イスラエルは再交渉に応じず、ハマスの要求に対して何も見返りを与えないと拒絶した。ハマスはこれを拒否し、イスラエルは立ち去った。――これが真相です。
 ところが、米もイスラエルも「ハマスのせいだ」と西側メディアに一斉に報道させました。イスラエルは、「ガザからのロケット弾を探知し、迎撃し、ハマスが停戦協定に正式に違反した」と主張しましたが、その詳細な証拠は示しませんでした。一方、ブリンケンは、エルサレムでのイスラエル人殺傷を理由にしました。いったいどちらが正しいのですか?こうしたあれこれの言い訳の中に、彼らの根拠薄弱が端的に出ています。両国の理由なら、交渉の場でぶつければ済む話です。
 現に、ハマス側は幾度も交渉の継続に忍耐を示しました。停戦終了2日前の11月29日、国連の国連人道問題調整事務所(OCHA)は、イスラエル軍がガザでパレスチナ人を銃撃し、2人が死亡したと報告しました。11月30日には、イスラエル軍がガザ地区の一部を砲撃したという報告が入りました。そうした挑発にもかかわらず、ハマス側は交渉を続けたのです。
 少し考えれば、分かることです。ハマス側は、激しい空爆と地上戦の一次休戦で、住民が安堵し、束の間の休息、人道支援の搬入で一息ついていたところです。逆にイスラエル側は、休戦が長引けば長引くほど、殺すことで維持してきた軍の士気が落ちます。実際、11月27日、ガザ侵攻部隊の一員であるイスラエル軍と面会した際、ヨアブ・ガラント国防相は彼らにこう言いました。「あと数日で、我々は戦闘に戻る。我々はガザ全域で戦う」と。そもそも捕虜交換は彼らの戦争の目的ではありません。攻撃を再開したかっただけなのです。
 どちらが休戦延長を欲し、どちらが戦争再開を欲していたか、明らかです。米・イスラエルは、ガザの230万人をシナイ半島へ強制移住=追放する計画を実行に移そうとエジプトに圧力をかけ続けています。一時休戦を余儀なくされたとはいえ、とうとう本来の目標である民族浄化=ガザ住民の虐殺と追い出しを実行することに決めたのです。このため両国は、来年初めまで、あと2ヶ月間、虐殺戦争の継続で一致しています。

ガザ:ハマスとイスラエルの停戦はなぜ終わったのか?(The New Arab、2023/12/02)
ハマス、ガザ停戦終結の全責任は「イスラエル」にあるとする(Al Mayadeen、2023/12/04)
イスラエルはハマス打倒のために「非常に長い戦争」を計画している(The Cradle、2023/12/02)

米ブリンケン、戦争再開と大虐殺を全面支持
 米国務長官ブリンケンは戦争再開の12月1日、エルサレムでネタニヤフ首相と会談し、「なぜ一時停止が終わったのかを理解することが重要だ。それはハマスのせいだ」「戦争が終わるまでイスラエルへの支援を続ける」と述べました。無条件支持です。何と彼は、その前、11月30日には、イスラエルの戦時内閣にも参加しています。戦争再開のゴーサインをここで出したのは間違いありません。これが米国の真の狙いであり、行動なのです。
ブリンケン:「戦争が終わるまでイスラエルへの支援を続ける(Middle East Monitor、2023/12/02)


11月30日、ブリンケンは戦時内閣と会談した(観察者网より)


バイデンの「民間人保護を」の偽善と白々しさ
 米政府は、口先では、絶えず偽善的なことばを吐きます。カマラ・ハリス副大統領は12月2日、ドバイで開催されたCOP28で、「国際人道法は尊重されなければならず、あまりにも多くの無辜のパレスチナ人が殺害されている」とメディアに向かって発言しました。しかし、必ず「イスラエルには自衛する権利がある」と述べ、結局は大虐殺を支持します。オースティン米国防長官も12月2日、「イスラエル軍が地元の民間人を保護しなければ、イスラエルは最終的に『戦略的敗北』を喫する」と述べましたが、同時に「イスラエルの軍事作戦を引き続き支援する」と強調しました。
米国防長官:民間人が保護されない限り、イスラエルの攻撃は「戦略的失敗」に終わるだろう(観察者网、2023/12/03)

 究極の偽善はバイデン政権が先週提案した「衝突回避メカニズム」(deconfliction mechanism)です。これは、イスラエルが国連やNGOの人道援助要員の居場所を確実に把握できるようにするというものです。これで民間人の犠牲を減らすというのです。しかし、これほど人を馬鹿にした話はありません。むしろイスラエルにターゲット・リストを渡すことなのです。国連など援助団体は、すでに何十年もの間、ガザでの活動や活動場所についてイスラエルに報告してきました。ところがイスラエルは、それを活用して、今回、国連施設、病院、学校、モスク、人道援助施設や車両を狙い撃ちに攻撃しているのです。国連施設を破壊すれば、そこにハマスがいるからだ、病院を破壊すれば、そこがハマスの拠点だからだ、学校・モスクを攻撃すればハマスが隠れ蓑にしているからだと攻撃し続けたのです。
バイデンはイスラエルのガザ攻撃を支持し、もっともらしい反証に努める(Mondoweiss、2023/12/02)

民間人犠牲者をなくすには米国が援助を停止すれば済む
 バイデンが本気で民間人の犠牲をなくしたいのなら、イスラエルへの軍事・経済援助を停止すれば済むことです。米国の援助なしにイスラエルは戦争できないのですから。バイデン大統領の援助停止の一言で虐殺は止まるのです。ところがバイデンは絶対そうしません。
 イスラエルは平然と、「ハマスを撲滅すれば人道的危機はなくなる」と述べています。「人道的危機をなくすために人道的危機を起こす」という論理です。バイデンは、ハマス撲滅とイスラエル自衛権を支持することで、イスラエルのこの殺戮の凶暴・共犯者になっているのです。
 ガザ政府高官は米政府を厳しく非難しました。戦争再開と大虐殺は、米国の全面支援と援護のもとに実行されている、と。ウォールストリート・ジャーナル(12/2)によれば、「10月7日のハマスによるイスラエルの攻撃以降、米政府は爆弾約1万5000発、155ミリ砲弾約5万7000発をはじめ、大量の武器の供与を続けている。米国はイスラエルに提供した武器の総数や、重量2000ポンド(約1トン)のバンカーバスター「BLU-109」を100発供与したことをこれまで公表していない」。「米国はこれまでイスラエルに無誘導爆弾「Mk82」5000発超、重量2000ポンドの無誘導爆弾「Mk84」5400発余り、小直径爆弾「GBU-39」約1000発、無誘導爆弾に装着して精密誘導を可能にする誘導システム「JDAM」約3000個などを提供した」。これに追加経済援助143億ドルが加わります。
 米・イスラエルの共謀・共犯によるガザ大量虐殺を糾弾しましょう。パレスチナ連帯行動を強めましょう。

米、イスラエルに大型地下貫通弾を供与(ウォールストリート・ジャーナル12/2)
イスラエルとアメリカの指導者がガザの殺戮で一致団結(electronicIntifada、2023/12/03)

2023年12月4日
リブ・イン・ピース☆9+25

 パレスチナ連帯シリーズ開始にあたって(記事一覧)