![]() 90名近くの熱心な参加者が会場いっぱいに集まりました。開会前、キューバを知る会が『不屈の民』を演奏し、参加者の方々による合唱が会場に響き渡りました。 ―講演のあらまし― ・米国の介入を跳ね返して勝利した昨年の大統領選挙 2024年7月の大統領選挙では、マドゥーロが過半数を獲得して勝利した。一方、野党は分裂し、国民の支持を得られなかった。米国が政治・経済・情報・心理など様々な手段を行使する「ハイブリッド戦争」を仕掛けてきたが、マドゥーロがリーダーシップを発揮して撃退した。 米国は政権転覆を謀るのにCIAを使ってきたが、1990年以降はUSAIDが大きな役割を果たしている。2002年のチャベス暗殺未遂事件にも関わっている。 昨年の大統領選挙については、あるハッカーが、ベネズエラの電話システムを混乱させて3時間を稼いだのは自分だと告白した。その3時間で、選挙結果の正式発表がなされる前に、ニセの集計が発表され、さらに偽造された選挙証書までが公表されたのである。 ![]() 今年1月10日の大統領就任式はマドゥーロへの国民の支持を象徴するものであった。彼が掛けているタスキは国民の手で作られたものである。 ・マスメディアの反ベネズエラ報道と米国による経済制裁 昨年は日本も含めて世界で多くの選挙があったが、ベネズエラで選挙があると、なぜか大きなニュースになる。 ベネズエラに対する経済制裁は、1000以上を超える一方的強制措置であり、2017年の第一次トランプ政権の時に最大に達した。国連の人権独立専門家は「ベネズエラのハイパーインフレの最大の原因は米国の経済制裁であり、これは人道に対する罪である」と報告した。しかし、マスメディアでは、それはベネズエラ政府の悪い政治のせいだということになる。 ボリバル革命の25年のうち、10年が経済制裁下にある。2011年と比較したGDPは5分の1に、外貨収入は300億ドルから7億ドルになり、生活に大きな影響が出た。 米国は経済制裁によって揺さぶりをかけて、ベネズエラ国民に政権交代をさせようとしていた。しかし、その意図は破綻している。ベネズエラの野党は制裁を喜んだが、国民の80%は反対している。 ・コムーナ(コミューン)に基づく新たな民主主義の構築 ベネズエラ国民は、経済戦争と飢餓の中で、自分たちの自由を守ることの必要性を自覚し、もっと効率的に進めていくために団結しようという意志を持つようになった。 2015年、祖国システム(民衆の直接の討議と投票により、国民の要求をより的確に取り入れる)。2016年、クラップ(食糧配給システム)。ベネズエラ住宅計画。これらの基礎にあるのは住民の自治組織「コムーナ」(コミューン)における徹底した議論に基づく熟慮民主主義。 2021年よりベネズエラ経済は回復に向かう。インフレ率は15年前の水準に落ち着き、治安も劇的に改善した。昨年より、民衆の意識調査に基づき、選挙によって資金を投入するプロジェクトを決める活動を行っている。 ・“7つの変革” マドゥーロは未来に向けた祖国の7つの変革を発表した。この内容を議論する会議が昨年の11月に開催され、350万人が参加した。 1 経済変革 石油依存を超えて産業を多極化。戦略的資源である石油を税制改革などに活用。 2 完全な独立 デジタル化により各種の手続きを一本化。 3 平和・主権・安全保障 米国がガイアナを使って領有している領土(エクソン・モービルが違法に操業)の回復。平和の裁判官をコムーナから選出。 4 社会的変革、福祉、食料配給制度、医療の向上。 5 政治面の変革 コムーナを中心とした人民権力を確立し、政治の透明化を図り、汚職を減らす。 6 エコロジーの変革 包括的な環境政策。災害対策。農業と環境問題を融合するアグロエコロジー。 7 地政学的な変革 ALBA(米州ボリバル同盟)やBRICsを通じて、世界に影響を与えていく。 今日、世界で30か国が米国の経済制裁下にある。世界で30か国。世界の人口の半分が違法な制裁下にあり、その影響は全世界に及んでいる。全世界が米国の支配から解放されなければならない ・トランプ政権のファシズム的政策とベネズエラにおけるネオファシズム トランプ政権は、移民を正当なプロセスなしに刑務所に送っている。 3月15日に発した命令では、14歳以上のベネズエラ人は証拠がなくとも、「トレン・デ・アラグア」という犯罪組織の一員であると決めつけ、国外追放できることになっている。この犯罪組織は、ベネズエラではすでに根絶されているが、ベネズエラ人=犯罪者とするストーリーに使われている。この根拠は1798年の「敵性外国人法」であり、第二次世界大戦中、この法に基づき、日系人が収容所に送られたことでも知られている。全ての市民が持つ権利が侵され、国際法にも反する最悪の決定である。 ベネズエラでは大企業の支援を受けて、ネオファシズムが登場している。それはナショナリズムからではなく、大企業が人々の頭の中を牛耳ろうとするファシズムである。そして、彼らが劣っていると考える国々に介入しようとする。これはSNSを通じて社会的に脆弱な若者に入り込んでいる。 ・反ファシズムの国際連帯を形成するベネズエラ これに対する反ファシズムの会議が2024年にベネズエラで開かれ、97か国の代表者が集まり、「反ファシズムインターナショナル」の設置が提唱された。 トランプ政権は第二期もベネズエラに対する攻撃を仕掛けてきた。しかし、ベネズエラは前回と同じではない。準備ができている。ベネズエラは孤立していない。新たな友好国ができている。昨年の国連総会では120か国が制裁に反対した。 多極化か一国主義か。主権か従属か。ベネズエラは孤立していないという希望を感じる。より民主的で公正な世界のために手を携えていくことができる。 ―質疑応答― (会場からは多数の質問用紙が寄せられたが、時間の都合から限定された。) Q 日本政府はベネズエラに対してどんな態度を取っているか? A 2017年にリマ・グループというものが設立された。これはマドゥーロに対抗した候補者グアイドを大統領として承認するためのもので、日本も米国らと同じく、グアイドを承認した。基本的にこの傾向は変わっていないが、最近、駐ベネズエラ大使を任命するなど、変化がみられる。 Q 経済制裁の手法にはどんなものがあるか。また、シェブロンの撤退(2月27日、トランプ大統領がベネズエラでの石油事業許可の取り消しを発表)はどんな影響があるのか。 A 例えば、国外資産の凍結。これはまさに盗まれたのと同じ。イングランド銀行に預けられた金(ゴールド)も引き出せない。ドルでの決済もできない。米国の介入を恐れた企業や銀行がベネズエラとの取引を避ける「オーバー・コンプライアンス」。 「人道的な取引」は制裁から除外されるはずだが、パンデミック当時、国連が仲介して必要な医療機器を入手できるようにしたが、米国は関与した企業を調査して脅した。だが、ロシア・中国・キューバの国際協力とコムーナのシステムのおかげで、ベネズエラはパンデミックを乗り切れた。 シェブロンの問題は短い時間では語りつくせないが、撤退で一番損をするのは米国である。ベネズエラの石油埋蔵量は世界一で、しかもコストが安い。米国のシェールオイルはあと5年から10年。 Q コムーナでの議論はどのようにして実現されるのか。 A コムーナの重要性を示す3つの実例を挙げたい。 @ 国民的諮問と投票による民主主義モデルの変化。自分の代わりに議論する人を選ぶのではなく、自分が直接議論する直接民主主義。 A 国民議会、地方議会の候補者を、草の根から、つまりコムーナの中から選ぶ。 B 「コムーナ国家」を目指すための憲法改正。そのための議論を各コムーナでおこなっている。 今年の夏、日本企業でベネズエラツアーの計画がある。その中にはコムーナの見学もあり、ぜひ、実際に行って見てほしい。 2025年3月25日 |
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