[翻訳紹介]
「9.11から8年後の今日、タリバンはアフガニスタンの80%に恒久的プレゼンスを擁している」

 国際シンクタンク「治安と開発の国際審議会(International Council on Security and Development、ICOS)」の新たな研究についてのプレスリリースを紹介する。ICOSは、米政権を支持する立場からアフガン政策に対する提言を行うのであるが、ここで見る限り、米軍の増派についても傀儡政権の正当化のために強行した大統領選挙についても、それらが逆に彼らが掃討すべきタリバンの活動を活性化し、人民のカルザイ政権への不審をますます増大したという結果以外の何者をももたらさなかったことを明らかにしている。研究は、911事件から8年目にあたり、アフガニスタン全土の8割がタリバンの実質的支配地域にあるところまで拡大してきており、とりわけこれまで安定していた北部にまでタリバンの影響が拡大していることを認めているのであるが、それが顕著になったのがオバマが増派を行い選挙を控えたここ数ヶ月だというのである。
 研究は、アフガンと支援国が「不測事態対応計画」の作成を急ぐべきだと言っているが、その具体的中身はない。少なくともそれがカルザイによる「非常事態宣言」ではないことは明確だ。オバマの戦争=米軍増派と大統領選挙強行が、アフガニスタンの泥沼化を一段と新しい段階にまで高めてしまったことを嘆いているのである。
 9.11事件8周年を機にCNNとオピニオン・リサーチ社が共同実施した世論調査では、アフガン軍事作戦の支持率が39%と過去最低を記録し、民主党党員らの支持率は23%となるなど、オバマはいっそう孤立している。アフガンから撤退の決断が迫られていると言うべきである。
アフガン軍事作戦の支持率、39%と過去最低 米世論調査(CNN)
Eight years after 9/11 Taliban now has a permanent presence in 80% of Afghanistan(Icosgroup)
オバマの「対テロ戦争」(5) 追い詰められる米・NATO軍。タリバンの支配地域が8割に拡大(リブ・イン・ピース☆9+25ブログ)

2009年9月16日
リブ・イン・ピース☆9+25


[翻訳紹介]
9.11から8年後の今日、タリバンはアフガニスタンの80%に恒久的プレゼンスを擁している。
広範囲の選挙の再調査をきっかけに、冬の始まりは第2ラウンドの投票を春まで遅らすかもしれない。
大統領職の憲法上の空白に対して必要とされる不測事態対応計画


 ロンドン―ICOSから今日発表された新地図によれば、現在タリバンはアフガニスタンの80%に恒久的プレゼンスを擁し、2008年11月の72%から増大させている。ICOSによれば、アフガニスタンの別の17%では、「実質上の」タリバンの活動が見られている。総合したこれらの数値によれば、タリバンはアフガニスタンのほぼ全域で重大なプレゼンスを擁している。
 「タリバンの容赦ない不穏な復帰や拡大と前進は、今では疑いの余地が無い」と、ICOSの研究主任ノリン・マクドナルドは語った。

タリバンの足跡の急速な拡大:急速に悪化する北アフガニスタンの状況
 前回のICOS地図は、アフガニスタン全土にわたるタリバンのプレゼンスの着実な増大を示した。ICOSの見積もりによれば、2007年11月タリバンの恒久的プレゼンスは54%、同じ方法で2008年11月は72%であった。
 新地図によれば、タリバンの反乱はアフガニスタン全土にその影響力を拡大し続けている。ICOSの政策アナリストのアレクサンダー・ジャクソンは次のように語った。「この数ヶ月の劇的変化はアフガニスタン北部の状況の悪化であり、そこは以前アフガニスタンで最も安定した地域の一つであった。クンヅーズやバルキのような州は、今ではタリバンの暴力に大いに影響を受けている。アフガニスタン北部の至る所で、国際統治機関、アフガニスタン行政機関、民間標的に対する反乱軍の攻撃ペースの劇的上昇がある。」
 彼はまた、「9.11攻撃から8年、タリバンは復帰しアフガニスタンのほぼ全ての所に接触している。」と語った。

決選投票は春まで遅らされるかもしれない
 アフガニスタンの大統領選挙は8月20日に実施された。投票日から、アフガニスタン機関である独立選挙委員会は票を数えているが、選挙苦情処理委員会に監視されている。
 第1ラウンドで大統領になるには、候補者は投票数の50%以上を得なければならない。9月8日予備選の結果が公表された。現職のカルザイ大統領は54%、主要対立候補アブドラは28.3%であった。
 しかし、選挙苦情処理委員会によれば、投票過程は不正の現われによって台無しにされた。何百もの投票所はその結果を投げ捨てられ、脅迫や票の水増しや偽の投票所の犯罪が蔓延した。その結果、選挙苦情処理委員会は部分的な数え直しと調査を命令した。
 アフガニスタン選挙法では、決選投票は予備選結果の公表後2週間以内に実施されなければならない。しかし、変更されたスケジュールは、10月の最初の日々に第2ラウンドを規定するように組まれている。選挙苦情処理委員会の数え直しと調査の規定の結果、このスケジュールは守られるはずもなく、最終結果はおそらく数週間もわからないであろう。
 決選投票か再投票が必要ならば、これは、次の何ヶ月かは北部のアフガニスタンの多くの地域の厳しい冬の条件によって邪魔されることもないかもしれない。これは第2ラウンドを春まで送らすかもしれない―アフガニスタンを何ヶ月も憲法上の空白に置いたまま。アフガニスタン憲法には、そのような状況下でカルザイ大統領に大統領職を続けさせ得る条項はない。
 マクドナルドはまた次のように語った。「このことは、大統領の法的権威の欠如と、その結果として何ヶ月も引きずる政治的不安定性や政治的麻痺の両方の可能性を高める。今の所、問われる問題は多くあるが、与えられる良い解答は全くない。前方には大きな不確実性が横たわっている。」

緊急に必要なもの:事態を安定化させるための合憲の不測事態対応計画
 ICOSは、2009年8月7日に発表した報告から、アフガニスタン人と国際オブザーバーはこの事態に対する不測事態対応計画を緊急に必要とする、という選挙前の警告を繰り返す。ジャクソンはまた語った。「今では、かつて以上に、国際社会はカブールの憲法上の空白に対する不測事態対応計画の確立を必要とする。アフガニスタンの将来は、この紛糾した8月の投票の後で決定されることは決してない。」

魅力のない選択:非常事態宣言
 憲法下で、カルザイ大統領は議会の承諾を得て国家非常事態を押しつけるかもしれないが、この選択は、現在の政治的緊張を和らげるよりかは、悪化させる高いリスクを有している。ジャクソンは語った。「タリバンは、アフガニスタンの掌握を、別のラウンドの選挙実施はもっと難しくなるようなレベルにまで拡大した。8月に投票するリスクを冒したアフガニスタンの人々が、第2ラウンドの投票に―特に第1ラウンドがひどい不正だらけであった時に―自らの生命を進んで危険にさらそうとはしないかもしれない。」

 アフガニスタンの人口は2,300万人、国土面積は645,803km2

※タリバンのプレゼンスを示すICOSデータの方法論
 アフガニスタンにおけるタリバンのプレゼンスを詳細に示すデータは、2009年1〜9月の毎日の反乱軍の活動の報告から集められた。ICOSは、この方法論によって記録された事件のレベルは、公的な第三者の報告によるのと同様に控えめで、公になっていない事件もあると考えている。
恒久的なプレゼンス:平均週1回以上の反乱軍の攻撃(致死及び非致死の)のある州によって定義される
実質上のプレゼンス:平均月1回以上の反乱軍の攻撃、タリバンが地元で活動していると思う住民を含む(タリバンの目撃の頻度に基づく)
軽いプレゼンス:月1回未満の反乱軍の攻撃、地元住民はタリバンが地元で活動しているとは思っていない(タリバンの目撃の頻度に基づく)。%の計算のために、アフガニスタンの全地域は、タリバンの恒久的/実質的/軽いプレゼンスを支える全地域に分割された。


2009年8月


2008年11月



     タリバン・反政府勢力の軽いプレゼンスのある地域
     タリバン・反政府勢力の実質的なプレゼンスのある地域
     タリバン・反政府勢力の恒久的なプレゼンスのある地域

(翻訳 W)