トルコ・シリア大地震
バイデン大統領は対シリア制裁を即刻解除すべき
救助活動を妨害するな

経済制裁によって救援活動が困難に
 2月6日にトルコ南東部・シリア北部でおこった大地震から一週間過ぎ、惨状が日々報じられ、被害がますます拡大しています。建物、道路、橋が瓦礫の山となり、膨大な死傷者、避難民が発生しています。トルコ、シリア両国の死者数は13日現在で計3万6千人を超え、今も増え続けています。
 とりわけシリアはすでに長年の戦争で慢性的な危機にあり、人道的危機に陥る危険が高まっています。最大の問題は、米国が主導する西側諸国による経済制裁です。瓦礫を取り除くための機器が制裁によって禁止されているため、手作業や粗末な道具でしか瓦礫を掘れない、救援物資が不足し、輸送手段も限られている、医薬品や医療機器へのアクセスもできない等々の問題が生じています。
 シリア外務省は7日、人道的活動と救助活動を妨害したとして米国の制裁を非難しました。シリア・アラブ赤新月社は、救助活動のための機器、救急車、消防車、重機、医薬品の調達のため、即刻の制裁解除を求めました。現地からの声や国際的な批判にさらされ米政府は10日になってようやく、“地震被害に関する救援物資に限って180日間制裁を緩和する”との方針を発表しましたが、これはパフォーマンスにすぎず、実質的な人道支援とはほど遠いものです。先述のように、輸送手段や重機などあらゆるものが不足しているからです。しかもバイデン政権は「アサド政権を承認しない」と政府間の直接的な交渉を拒否する姿勢を崩さず、救助活動を妨害しているのです。

アサド政権打倒をめざす米国
 米政府は、2003年にイラクを侵略し、フセイン大統領を打倒・殺害し、2011年にリビアを打倒しカダフィ大佐を殺害しました。そして同年、米国主導でシリアへの軍事介入が始まりました。直接介入ではなく、アルカイダやイスラム国などイスラム原理主義武装勢力を使った介入です。アサド政権を打倒すれば、反米独立を掲げる国は激減し、米国の中東支配・石油支配は大きく前進すると考えたのです。
 しかし、アサド政権は持ちこたえ戦争に勝利しました。米国は、今度は制裁でシリアを崩壊させようと目論みました。シリア制裁は、米国のシリア侵略戦争の延長なのです。米政府は2020年に「シーザー法」を制定し、シリア政府と取引する企業に制裁をかけ、シリアの貿易・投資をストップさせる暴挙に出ました。これが国家再建も、今回の被災者救助をも困難にしているのです。また米国は2014年以来、今もシリア北東部と東部に米軍を駐留させ、軍事的プレゼンスを維持しています。米国は、シリアの分割と資源略奪を諦めていません。

シリアの石油の8割を略奪
 米国は国家再建の資金源を断とうと、シリアの石油、天然ガス、鉱物資源を露骨に略奪し続けています。これは荒廃した国家の再建の財政基盤を掘り崩す、まさに強盗行為です。国家主権の侵害であり、天然資源の違法な植民地的略奪です。米軍は、盗んだ石油を、一部は石油タンカーで中東の米軍基地に運び込み、一部はイラクに輸送し、そこでイラクの石油会社に低価格で販売し、そのお金を使ってシリアの反政府武装グループを支援しています。
 シリア政府は、2022年前半時点で、シリアの1日の平均石油生産量8万バレルの約8割が米国に奪われたと非難しています。シリア外務省は、米国が2011年から2022年6月までにシリアの石油・ガス部門に与えた損害は約1071億ドルにのぼると、国連に申し立てています。

対シリア制裁を即刻全面解除せよ
 一刻も猶予がありません。この深刻な自然災害に対して全世界が被災者に即刻の支援を提供し、人道的災害の発生を防がなければなりません。大地震被害につけ込み、アサド政権打倒に利用しようとするなどもっての他です。バイデン大統領は対シリア制裁を即刻全面解除すべきです。救援活動への妨害をやめるべきです。米軍はシリアから撤退し、不当な石油略奪をやめるべきです。

2023年2月14日
リブ・イン・ピース☆9+25