これまでベールに包まれていた、アフガニスタン戦争における民間軍事会社の役割が、カブールの米大使館の警備員たちが引き起こした大スキャンダルによって一気に明らかになった。米民間非営利団体「政府監視プロジェクト」が、米大使館の警備を請け負う米民間軍事会社社員の「規律が著しく乱れ、大使館を危険にさらしている」との調査書をまとめ国務省に告発した。報告書は、社員たちが飲酒や全裸パーティーを繰り返していたとし、わいせつ写真まで配信されている。 ※Our Embassy in Afghanistan Is Guarded by Sexually Confused Frat Boys(Gawker.com)
わずか5000人程度の米軍の投入で2002年には勝利したかに見えたアフガニスタン戦争は、みるみる兵員がふくれあがり、現在当初の12倍にもなっている。この数週間内にもマクリスタル将軍が2万人の増派を要求するという議論もされている。米軍拡大への転機はアフガニスタンでの「タリバン復活」と反米闘争の拡大が目に見えて明らかになった06年である。 もちろん、アフガニスタン戦争における民間軍事会社の問題が表面化するのは初めてではない。捕虜虐待や市民銃殺などで問題となり、それが米国の駐留に対する怒りとして拡大していたが、イラクの陰に隠れて話題にされて来なかったのである。オバマによるアフガニスタン重点化によって、あらためてクローズアップされることになったのだ。 ここで驚くのは、民間軍事会社=傭兵の異常な多さである。ブッシュ政権は、イラク戦争の泥沼化で兵力を割くことが困難であった分を、7万人近くの傭兵の派遣で補っていたことになる。オバマにおけるアフガン増派戦略は、もはやアフガニスタンの戦略が、民間軍事会社の軍事活動では成り立たなくなったことへの応急措置という側面があった。いかなる軍事法規にも縛られずやりたい放題の傭兵たちの活動が、アフガニスタン人民の怒りを拡大したことは想像に難くない。これまでのアフガニスタンの戦争は、「傭兵の戦争」でもあったわけだ。実際、3月末の時点で、米軍52000人に対して、傭兵は68000人に上っていたという。この57%という比率は米国の戦争史上最大の比率である。しかも傭兵の85%が米国民ではなく、各国から寄せ集めた人々だというのである。 アフガニスタン市民への殺害や虐待をほしいままにし、米兵と世界から寄せ集めた傭兵によって遂行される「対テロ戦争」をいますぐやめるべきである。 ※Afghanistan Contractors Outnumber Troops(ウォールストリートジャーナル) ※Report: Contractors Outnumber Troops In Afghanistan By Highest Ratio In U.S. History(Huffingtonpost.com) ※Contractors Outnumber U.S. Troops in Afghanistan(ニューヨークタイムス) ※Private Military Contractors also Creating Problems in Afghanistan(The Century Foundation)
2009年9月13日 ※オバマの「対テロ戦争」(4) 傭兵が米兵の数を圧倒するアフガニスタン戦争 ※オバマの「対テロ戦争」(3) アフガン空爆で、少なくとも95人の市民が犠牲に ※オバマの「対テロ戦争」(2) CIAによる拷問報告書の公表。しかし他方で新しい尋問機関を設置。 ※オバマの「対テロ戦争」(1) 中南米の重大な脅威。米軍がコロンビアの軍事基地使用拡大。 |