#つなごう改憲反対 連続講座第1回開かれる
「何のための9条改憲」を巡って多様な報告と熱心な討論

 「#つなごう改憲反対 みんなの行動」の一環として、5月21日にリブ・イン・ピース☆9+25主催で連続講座第1回「何のための9条改憲?」が開かれました。会場には40名近く、オンラインで30名近くの方が参加しました。

 初めに主催者から、4月23日に「#つなごう改憲反対」のキックオフ集会が90名の参加で成功したこと、今回の企画はそれに続くものであることが紹介されたこと、今回は改憲反対をさまざまな角度から取り上げる第1回として憲法9条の果たしてきた役割と9条改憲の阻止の意義について報告を受けて議論したいと提起されました。続いて4つの報告が行われました。

 報告@「日本国憲法第9条」は、「学校で日本国憲法について学んだことがありますか?」「憲法と法律の違いは何でしょう?」と会場に質問する形で始まりました。憲法が最高法規で、法律は憲法に基づかねばならないこと、法律は個人を縛るが憲法は国家を縛るものであること、だから国家は憲法を守らなければならないのです。報告者は、現在の日本政府が侵略戦争のことを本当に反省しているとは思えないが、その国家権力を縛るのが憲法であり、戦争を封じているのが憲法9条だとその意義を説明しました。

 報告A「憲法9条をめぐるせめぎあい」で、報告者は初めに「憲法9条は過去の侵略戦争の反省の証であること」「反ファシズムの国際的な力と、被害国民が押し付けたものだが、日本の人民の闘いによって維持された」ことを話しました。そして、戦後9条が日本を戦争に参加させることに一定の歯止めになったとともに、改憲を試みる政府・保守層と人民大衆の間でせめぎあいとなってきたと以下の例をあげました。朝鮮戦争当時、権力による改憲策動を護憲闘争が挫折させた。ベトナム戦争に日本自身を参戦させなかった。アフガニスタン、イラク戦争では、米の圧力で戦争に自衛隊を海外派兵したが、任務を制限させた。もし9条がなければ参戦し殺し殺されることになっただろう。9条は、国内的には自衛隊の軍隊的ふるまい、攻撃的な兵器にしばりをかけてきた、等々。そして、最後に9条を骨抜きにしようとする今の危険な兆候、安倍を引き継いで岸田政権の改憲策動、日米一体化加速、軍事費2%への拡大などの動きを批判し、改憲反対の声をあげ、憲法を生かし武力ではなく平和的共存を呼びかけようと報告しました。

 報告B「自民党改憲草案に見る9条改憲の危険」は、2012年の自民党改憲草案を見ることで、9条改憲を通じて自民党・保守層が強行しようとする改憲の本質、全体像を把握しようとするものでした。自民党が9条改憲について今言っている「自衛隊を憲法に書くだけ」はウソである。自民党改憲草案は自衛隊を軍隊(国防軍)として明記し、戦争をするために必要な改定を加えている。それは国防軍の設置、国家緊急権の発動、国民の統制、人権の制限、翼賛体制創設までが必要とされています。報告者は、現在自民党は改憲4項目としているが、それはハードルの高い憲法論議を回避し、自衛隊、国家緊急権を条文に一言入れ、後は法律改定で9条を骨抜きにしようとしている、維新が同様の改憲案を出して議論を加速させようとしており、危険な動きになっている、9条改憲を阻止しようと訴えました。

 報告C「9条とウクライナ戦争」はウクライナ戦争から学ぶ教訓は何かがメインテーマでした。報告者は、自民、維新などが他国が攻めてきた時「9条があれば国を守れない」「軍事力の増強が必要、GDP2%に」「核共有を」の声をあげているが、根本的に間違っている、日本を攻めてきた国など存在しないと話を始めました。こうした声に騙されてはいけない、立ち止まって事態を冷静に考えようと提案しました。ロシアのウクライナ侵攻、戦争に反対で直ちに停戦を求めます。戦争を起こさないようにするには、戦争の原因は何かを明らかにすべきです。ロシアとゼレンスキーとの間でまとまりかけていた停戦交渉は米とNATOIの介入で頓挫し、今は局面が変わりました。戦争を止めるためには、米とNATOが武器供与を中止し、戦争拡大を止めることが必要と提起しました。
 また、報告者は米とNATOの拡大とウクライナの対ロ挑発が戦争の背景であり、軍事力で相手を包囲、威嚇するから戦争が起こる、改憲勢力は「攻撃されるから軍備増強が必要」「中国は脅威、ウクライナの次は台湾」と煽り中国封じ込めのために軍拡、9条改憲を狙っている、欧州でのロシア包囲と同じことを中国に仕掛けようとしている、それこそが戦争を引き起こすと話しました。今回のバイデン訪韓、訪日はロシアに続いて中国を包囲し、孤立させ、弱体化せることが目的です。それは戦争への道です。私達は憲法に基づき、平和外交でいく。今は何よりも9条改憲を阻止し、戦争への道を進ませないことが重要と提起しました。

 休憩の後、沖縄出身の学生から連続講座に寄せられたメッセージが紹介され、その後質疑と討論が行われました。たくさんの質問や意見が出されましたが、その一部を紹介します。

 最初の質問者は「米・日とも中国と経済的な結びつきが強く、米は世界最大の政府債務をかかえ、その多くは中国が持っている。本当に米は中国と戦争ができるのか、煽っているだけではないのですか?」。これに対して、報告者からは、中国が経済力で日本を超え、米国が脅威と考えるようになった、しかし、米中が戦争になると核戦争になり共に滅ぶ。米が考えているのは、通常戦争で、米国が前面に出ず、地域戦争で中国に打撃を与えることです。そこに台湾が出てくるのです。米国の力は弱くなってきていますが、ウクライナ戦争をきっかけに巻き返しをして、リーダーシップを取り戻そうとしているのです。

 次の参加者は、「ロシア侵攻についてはさまざまな意見があり、主権国家は断固守るべきというものや、攻められているときには闘う権利があるというもの、反対に戦争はやればやるほど犠牲者が出る、”国やぶれて山河あり”では意味がないなど。しかし、国を守るというのはこの国の何を守るのか。新自由主義の社会で貧富の差が拡大し、貧困にあえぐ人々を踏み台にしている自公政権を守るのかという意見もありました。どう考えられますか?」と質問しました。報告者からは、「ウクライナ戦争の性格は複雑です。しかし米・NATOの武器供与を止めさせ停戦に持ち込むことが緊急で最大の課題です。ウクライナ政府は特権階級が主導しています。それはロシアも同じです。人民が犠牲になっています。それでもウクライナは戦争を続けるべきだといいますか。だれのための戦争ですか。というのが僕の考えです」。

 さらに参加した大学生から「とても勉強になりました。今の若い世代にどうこの9条改憲問題を考えてもらえるかということに関心を持っていて、皆さんからのご意見を聞きたいです」「私達の世代が無関心のままいたら、日本は戦争をしちゃう国に突き進んでいくのではないかという危機感ももっています」という意見があり、会場から様々意見が出されました。
 「私は教育の中で教えるべきと考えているが、9条の意味とか役割とか踏み込んで教えられたことがありません」
 「元教員です。自民党の日本国憲法改憲草案は12条を「公益のため」と書き換え、9条には領土保全、国防の義務等。戦前は”滅私奉公”でしたが、今は”国家、資本、会社のための人材育成をめざす”教育です」
 「憲法を手にしたベネズエラの人々が、これを学びその理想を実現したい、と述べた映像を見て感銘を受けました。日本では憲法を小中で習ってはいるけれど、生活とバラバラです。さまざまな問題を憲法の平和主義と結び付けられたらと思っています」
 「定時制で長く、比較的自由に教えていました。最後の10年は維新政治などで教える内容に踏み込まれるようになっていました。99条に公務員の憲法尊重義務があると教えてきたが、安倍政権は守るべき立場にありながら露骨に改憲を言いだました」
 「小中学校の先生が子ども達に憲法のことを、どうわかりやすく教えていくのかが大切です。日本国憲法がどうやってできてきたか、明治憲法と日本国憲法はどうちがうのか、きちんと教える必要があります」
 「私は日本が侵略して、人を殺してきたんだということを教えるべきだと思っています。戦争でも被害者で苦しい思いをしたことが強調されるが、加害者という側面が出されていない。9条については日本が侵略した国に対して戦争はしないという約束という側面がある。私達一般市民も加害者という面も教えないといけない」
 ――など、次々と尽きることなく意見が出され討論が続きました。

 最後に、次回の連続講座は6月11日、「教育と憲法 子どもが学ぶ権利か?国が押し付ける教育か?」です。ぜひご参加くださいと呼びかけられました。

2022年5月29日
リブ・イン・ピース☆9+25