「戦争ショックドクトリン」を許すな!
ウクライナ戦争に乗じた日本の9条改憲・軍拡・非核三原則無効化・武器輸出に反対しよう

 日本政府・自民党・維新の会をはじめとする極右勢力が、ウクライナでの戦争を絶好の機会とばかりに、日本の軍拡・戦争準備・憲法改悪に一斉に動き始めています。「ウクライナは他人事ではない。今度は中国が台湾を攻撃する」「ウクライナがミサイル攻撃にさらされているのは敵基地攻撃能力がないから」「軍事費を大幅に増やすべき」「『核共有』が必要」「憲法9条では国は守れない」などと、ここぞとばかり言いたてています。中国に対する軍事的包囲、戦争準備、そのための軍備増強と改憲を、戦争に関心が集まっている今一気に進めようという、いわば「戦争ショックドクトリン」です。こうした動きに即刻反対の声を上げよう。

最大のターゲットは憲法9条
 最大のターゲットが憲法9条です。昨年11月の総選挙で「改憲勢力」が2/3の議席を確保したことにより、憲法改悪の危険性が高まっています。彼らは憲法に自衛隊を明記して9条を無力化し、対中国戦争への軍事力強化と軍事費大幅増額を進めようと狙っています。そこにこの戦争。「隣に何をするか分からない国があるのだから、改憲をして軍事力を強化しなければならない」とする理屈を、今なら多くの人が受け入れると踏んでいるのです。
 しかし、ウクライナでの戦争が示しているのは、それとは全く逆のことです。軍事力と軍事同盟こそが戦争をもたらすのです。この戦争の原因は米国とNATOがロシアを追いつめるために東方拡大を進めてきたこと、ウクライナのゼレンスキー大統領がそれを利用しようとしたことにあります。ロシアは「何をするか分からない国」などではありません。侵攻は正当化できないが、それには理由があります。米国・NATOの包囲網への危機感から来たものです。相手を尊重し平和的共存を求めるのではなく、軍事力による威嚇を続け、緊張を高めてきたことが戦争につながったのです。これこそがこの戦争から得られる教訓です。
 中国も同じ危機感を持っています。日本が中国包囲に加担すれば、より緊張が高まり、戦争につながりかねません。9条と憲法の平和主義を守り抜いてこそ、アジアでも、中国やロシアとの平和共存を打ち固めることができます。今まさに憲法9条の存在意義が、これまでになく高まっているのです。

日本への核兵器配備を狙う「核共有」論
 安倍元首相や維新の会が主張するのは、通常兵器の軍拡だけにとどまりません。「核兵器を持たず・つくらず・持ち込ませず」の「非核三原則」にも矛先を向けています。2月27日、フジテレビの番組で、維新の会の橋下が「米国と共同して中距離ミサイルを日本に置くことも考えなければいけない。‥‥非核三原則の『持ち込ませず』は、米国と共同でという議論をしていく。‥‥次の参議院選挙でしっかり争点にしてほしい」と発言。これに安倍が「NATOでも例えば、ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリアは核シェアリングをしている。自国に米国の核を置き、それを落としに行くのはそれぞれの国だ。‥‥非核三原則があるが、世界はどのように安全が守られているか、という現実について議論していくことをタブー視してはならない」と応じました。維新の松井代表も「非核三原則は昭和の価値観」と発言し、維新は橋下発言を「緊急提言」として政府に提出しました。
 NATOの核シェアリング(核共有)とは、一部のNATO諸国に配備した核兵器を米国と共同運用するものですが、「共同」と言っても使用の決定権を持つのはあくまでも米国です。米国が核兵器の使用を決定したら、配備されている国に拒否する権限はありません。「核共有」について議論するということは、ヒロシマ・ナガサキの犠牲の上に立って、日本の「国是」と位置づけられてきた非核三原則を解体することであり、米による日本への「核持ち込み」や恒常的な「核配備」を進めるということです。被爆者が強い反発の声を上げたのは当然です。
 今のところ岸田政権は、「核共有」については否定しています。しかし、木原官房副長官が3月27日に上記と同じ番組で「日米同盟を強化する中で、さまざまなオプションを考えていく」と発言するなど、議論は否定していません。米がINF条約を破棄し、米の中距離ミサイルの日本への配備が主張される中、きわめて危険です。

「三原則」を無視した武器輸出
 岸田政権は、「武器輸出三原則」を公然と踏みにじり、ウクライナに軍用ヘルメットと防弾チョッキなどを送りました。その輸送には、自衛隊機の他、米軍の輸送機も活用しました。
 もともと武器を外国に輸出・提供することは、「武器輸出三原則」で原則禁止されていました。それを、2014年安倍内閣が「防衛装備移転三原則」によって、条件付きで海外に輸出できるようにしました。しかしそこにおいても、「紛争当事国」には輸出が禁止されています。にもかかわらず、岸田政権は「ウクライナは紛争当事国ではない」と強弁しているのです。しかも運用指針では、武器を提供できる国について「米国を始め我が国との間で安全保障面での協力関係がある諸国」に限定していますが、ウクライナはこれにあたりません。そこで、指針に「国際法違反の侵略を受けているウクライナ」という項目を追加して、輸出を強行したのです。
 ヘルメットや防弾チョッキといえども、銃などと合わせれば武装兵士を生み、戦闘を更に激化させます。ドイツも最初はヘルメットの輸出だったが、すぐにミサイルにエスカレートしました。

原発再稼働と自衛隊配備
 この戦争によって、もともと高騰していたエネルギー価格が、さらに上がっています。これに乗じて、危険な原発の再稼働を叫ぶ声が大きくなっています。自民党の「電力安定供給推進議連」は、規制を一時的に外して停止中の原発の稼働を求める緊急決議を採択し、原子力規制委員会に、テロ対策施設の設置期限見直しなどで稼働を可能にするよう求めました。維新は「タブー視せずに安全基準を満たした原発は使うべきだ」と原発再稼働を盛り込んだ「経済対策」の検討を政府に要求しています。また、テロ対策施設が完成していない老朽原発美浜3号機、高浜1・2号機の再稼働を経産相に要求しました。
 さらに、「原発の安全を確保するため」と称して、自衛隊を原発周辺に配備する動きも強まっています。福井県の杉本知事は、ミサイルの迎撃態勢に万全を期すことを求め、原発が集中立地する同県嶺南地域への自衛隊配備を、防衛相に要請しました。岸田政権は、年内に改定する国家安全保障戦略、防衛計画大綱、中期防衛力整備計画に外国軍からの原発攻撃を想定した自衛隊の防衛体制を盛り込もうとしています。パトリオットミサイル(PAC3)部隊を原発周辺に配備するなどを想定しています。
 政府と自民党は、平時から自衛隊が原発を警護することも検討しています。現在の規定では、国会承認なしで自衛隊が動ける「警護出動」の対象は、自衛隊や在日米軍の施設などに限定されています。これに原発を加えるというのです。
 さらに、警備やミサイル迎撃だけでなく、「敵基地攻撃能力」の保有推進も「原発防衛」を口実にしようとしています。
 しかし、ウクライナの戦争が示していることは、標的にされうる原発の存在そのものが極めて危険ということです。警備や迎撃態勢を強化したところで、危険性をなくすことはできません。廃炉しかないのです。

「挙国一致」による「戦争ショックドクトリン」に抵抗しよう
 今、日本では多大な犠牲を生み出しているウクライナでの戦争を巡って、その責任をロシアに全面的に負わせ、ウクライナのゼレンスキー政権を「善」、ロシアのプーチン政権を「悪」とする報道や発言が支配的です。国会では「有事である今は政府に協力すべき」と、ウクライナ支援の「挙国一致」的な雰囲気が作り出されています。ロシア非難の国会決議には野党を含めほとんどの議員が賛成しました。ロシアへの経済制裁だけでなく、ウクライナへの武器援助にもほとんどの野党が賛成しています。武器援助に最終的には反対を表明した共産党も、議員が一時賛成を表明するなど動揺しました。
 3月23日に行われた、ゼレンスキー大統領の国会オンライン演説では、あらかじめタイムスケジュールに議員によるスタンディングオベーションが盛り込まれており、翼賛そのものでした。最後に挨拶に立った山東参議院議長は「貴国の人々が命を顧みずに祖国のために戦っている姿を拝見し、その勇気に感動している」と答礼の挨拶をしました。「命を顧みずに祖国のために戦う」とは、アジア・太平洋戦争における日本軍の美化と全く同じですが、ほとんど批判もされていません。
 こうした国会の状況では、自民や維新の極右勢力の目論み通り「戦争ショックドクトリン」が進められかねません。今回の戦争が、軍事力や軍事同盟を振りかざして相手を威嚇することから起きたことを、改めて強調したいと思います。「挙国一致」による「戦争ショックドクトリン」に反対し、押し返そう。

2022年4月10日
リブ・イン・ピース☆9+25