ウクライナ戦争の拡大反対。直ちに停戦を
欧州の燃料・物価高騰反対、ロシア制裁止めろの声と連帯を
(2)ウクライナ戦争の戦争拡大を阻止しよう

拡大するウクライナ軍への米・NATO軍の戦争指導と関与
 ウクライナ戦争で戦争拡大に関連して最大の危険は、米・NATO軍が、守勢に立ったロシア・プーチン打倒に向けて戦争に本格介入し始めたことです。転換点は今年の夏にありました。米が長射程のハイマース(HIMARS、装輪式自走多連装ロケット砲)を供与し、弾薬庫・物資集積地・橋梁などの破壊による補給妨害を可能にしたのです。目標選定も米が主導して行いました。それまでの米・NATO軍の協力は、西側製の携帯式対戦車ミサイル、対空ミサイルを供与し、ロシア軍の動向情報を与えて都市部、塹壕戦でウクライナ軍の防御を支援するにとどまっていました。
 9月はじめ、ウクライナ軍はロシア軍に対する電撃作戦を成功させました。その作戦を計画し、指導したのも米・NATO軍です。ウクライナ戦闘員をNATO諸国で数ヶ月、半年かけて訓練し、西側の戦闘法で鍛え、戦車や装甲車で重武装させ、それまでロシア軍が秘匿してきた数万の精鋭機甲師団を偵察衛星などで探り出したロシア軍の弱点に突入させたのです。これがハリコフでの快進撃でした。
 このように9月攻勢で米・NATO軍が戦争全般、攻勢作戦を全面的に指導するようになったのです。いまやウクライナ兵は米とNATOの指図に従って闘う手足となっています。具体的には、米・NATOが軍事衛星・偵察全体を引き受け、兵器・弾薬を補給し、米・NATOの司令部が計画を立案、ウクライナ軍とすりあわせながら各地の地域レベルの指導を行い、電撃戦と攻勢を指揮しています。米ペンタゴンは長期戦に備えて、ウクライナ戦争専用の軍司令部さえ新たに設置する構えです(※1)。
 米・NATOはまた、機甲部隊編成に数百両の旧ソ連製戦車とそれを上回る西側装甲車両など大量の必要な兵器・武器を提供しました。西側兵器の操作指導等、彼らの訓練はNATO諸国で行っています。莫大な軍事費はバイデン政権が中心に出しており、すでに米政府は2月以来170億ドル(2兆5千億円)もの軍事支援をウクライナに行っています。
 要するに、戦争計画と作戦指揮は米・NATOが、現地で戦い死傷するのはウクライナ軍兵士とウクライナ住民なのです。破壊されるのもウクライナの国土、農地、インフラです。
 この「代理戦争方式」は、ロシア軍のウクライナ侵攻以後に米国が編み出した新しい侵略方式です。イラク戦争やアフガニスタン戦争のように、米・NATO軍が直接戦闘に参加する必要はありません。米・NATO軍兵士は戦死しません。米・NATO諸国の国民は、他人事で済ますことができます。ウクライナ人兵士が消耗品として補給される限り、いつまでも戦争を継続できる、おぞましいやり方です。
※1 新司令部発足へ、ウクライナ支援に特化 米国防総省

ゼレンスキー大統領の暴走と冒険主義
 9月の電撃戦の成功でゼレンスキー大統領は勝利の幻想を持ったのでしょう。ウクライナ兵に出ている膨大な犠牲を顧みることなく、東部・南部地域やクリミアの奪還の野望を追い求めるようになっています。調子に乗って9月30日にはNATO加盟申請を行うまでになりましたが、米・NATO側から全加盟国の承認が必要だと棚上げにされました(※2)。
 ゼレンスキー大統領は10月4日にはプーチン政権との停戦・和平交渉を禁止する法(!)に署名しました(※3)。停戦・和平にはプーチン政権の打倒が前提だとの強硬姿勢です。また同月8日にもザポリージャ原発に砲撃を行い、外部電源を喪失させました。重大事故寸前の火遊びを繰り返しています。また同じ日に、クリミヤ大橋を車両爆弾で攻撃し重大な被害を与えました。ゼレンスキー大統領はクリミヤを武力で奪還するまで闘うと公言し、徹底抗戦、玉砕路線を加速させているのです。これに対抗するためのロシア側のインフラへのテロ攻撃は戦争拡大スパイラルの着火点になりかねません。
 また、ゼレンスキー大統領は10月6日、インタビューで、「NATOがロシアに先制核攻撃を行うべきだ」と主張しました(※4)。欧州核戦争を要求するとんでもない発言です。バイデン大統領はこれを止めるのではなく、核攻撃をしようとしているのはロシアの側だ、「ハルマゲドンだ」と無責任な宣伝をしています。戦争は制御できない危険水域に近づきつつあるのです。
※2 ウクライナ、NATO迅速加盟正式申請 プーチン氏との交渉否定
※3 プーチン大統領とは交渉せず、ゼレンスキー大統領が法令に署名
※4 ゼレンスキー大統領がロシア領への先制核攻撃をNATOに要請

米・NATOによるノルドストリーム破壊工作
 他にも戦争拡大の火種はあります。9月26日にバルト海でノルドストリーム1・2のパイプラインの4カ所が爆破されました。西側のメディアは直ちに「ロシアがやった」と馬鹿げたことを垂れ流しました。しかし、犯人はロシアでないことは明白です。ロシアが供給を止めたければパイプ破壊ではなくバルブを閉めればいいだけです。事件は米国と同盟国の軍・諜報機関の仕業と考えるのが普通です。ロシアは英国の関与を指摘しています。ドイツなど関係諸国が爆破直後から調査をしながら、物証どころか調査結果の発表もない、異常な状態です。米とNATOが自分たちがやったことを隠すために事実隠蔽をしているとしか考えられません。
 この破壊工作は、バイデン政権によるドイツのショルツ政権への脅しです。インフレ・物価高、ガス価格の高騰でヨーロッパ諸国が政治危機に陥る中で、EUの盟主ドイツがロシアに妥協的になるのを阻止するためにやったと言われています。米国が対ロシア戦争を完遂するには、EUの動揺を締め上げ、ヨーロッパ諸国を従属させる必要があるからです。

 しかし、ウクライナの代理戦争を今後どうするかでウクライナと米国、欧州の間で軋轢と対立も避けられません。ゼレンスキー大統領がロシアを全面的に追い出すまで闘うことに固執していますが、米国からは欧州の不満を抑え込むためにもウクライナに交渉に前向き姿勢を取るよう働きかけました(※5)。核兵器の不使用を巡っては米露高官の間で接触も行われました。欧州ではいつ終わるともしれない戦争の長期化とその下での対ロ制裁による燃料費高騰とインフレが諸政権を揺さぶっています。それへの対応を取らざるをえなくなっているのでしょう。しかし、直ちに戦争拡大を引き起こすような行動を止め、停戦に向かった話合いを始めることこそ必要なことです。
※5 米政権、ロシアとの交渉巡りウクライナに働きかけ=米紙

2022年11月13日
リブ・イン・ピース☆9+25