即時停戦と持続的和平をめざせ!戦争を煽動するな!
〜岸田政権の9条改憲、対中軍拡・戦争準備に反対する〜

I

(1) ロシア軍の侵攻から約1ヶ月が経ちました。ウクライナ戦争をめぐって今必要なのは、即時停戦と持続的和平を実現すること、これ以上市民の犠牲を出さないことです。戦争の拡大や持久戦でも、武器弾薬の供与でもなく、直ちに停戦することです。そのためにどうすればいいかを議論すべき時なのです。
 私たちは、ロシア軍の今回の侵攻は国連憲章に違反する侵略行為であり断固反対です。たとえ戦争の目的に正当な理由があっても、それを軍事力で実現することは許されません。全世界で反戦運動がロシア軍の撤退を要求することは当然のことです。
 しかし、今はどうすれば停戦と和平に向けて政治的転換を図れるのかを真剣に考えるべきなのです。そのためには、なぜロシアが侵攻したのか、ロシア軍を撤退させるには誰がどのように動けば局面を打開できるのかを、歴史的起原に遡って、冷静に考える必要があると思います。
 目下の反戦運動の喫緊の課題は、ロシアに停戦と撤退を要求すると同時に、西側諸国・メディア、そしてゼレンスキー政権による戦争拡大、徹底抗戦に反対すること、そしてウクライナのNATO加盟に反対することです。ロシアにだけではなく、米・NATO諸国やウクライナ政権にも即時停戦・持続的和平を要求することです。

(2) プーチンの戦争目的ははっきりしています。ウクライナの領土を獲得することではありません。ソ連崩壊後のNATOの東方拡大がいよいよ最終段階に来た結果、米国が主導する侵略的軍事同盟であるNATOから自国を守るための戦争なのです。
 米・NATOの残虐性は私たちが目の当たりにしてきたことです。イラクやアフガニスタン、リビアを侵略し、シリアにも手を出し、元首を殺害し、大量虐殺を行い、国土を焦土化しました。ヨーロッパではユーゴスラビアを侵略し国家をバラバラに崩壊させました。このような侵略的軍事同盟、侵略的軍事ブロックが、ソ連崩壊時の国際公約(1インチも拡大しない)を反故にし、米ソ冷戦が終焉してから30年以上も拡大を続け、最終的にロシアを崩壊させようとモスクワにミサイルで数分のところまで包囲網を狭めてきたこと自体が許されないことなのです。
 今は、西側政府もメディアも全く触れませんが、歴史的原因は米・NATOの東方拡大にあるのです。プーチンの警告や交渉に全く耳を貸さず、ロシアを見下し、封じ込めをどんどん狭めてきたのです。何もないところに突然、ロシアが侵攻したのではありません。昨年の2月、ゼレンスキー大統領は、NATO加盟と東部2州およびクリミア奪還を今年中に実現すると公言しました。米政府も加盟を匂わせました。しかし、ウクライナが今年中にNATOに加盟し、東部2州とクリミアを奪還すれば、ロシアとNATOの全面戦争になるのは明らかです。自動的に集団的自衛権が発動されるからです。明らかにゼレンスキー大統領の冒険主義です。これが今回のロシア侵攻の直接の引き金となりました。

(3) 従って、停戦と持続的和平の課題もはっきりしています。それはロシア軍の即時停戦、撤退とウクライナ軍の戦闘行為の中止を同時に行うこと、さらにはウクライナのNATO加盟の断念、ウクライナ軍による東部2州への攻撃中止、中距離ミサイルのウクライナ配備計画の中止です。すなわちロシアによるウクライナの安全保障と引き換えにウクライナが米・NATOによるロシア攻撃の前進基地になることを断念することです。
 ところが事態は全く反対の方向に動いています。ゼレンスキー大統領も西側政府もなぜこのような平和的外交的解決に進まないのか、疑問です。バイデン政権を先頭に、米欧日の西側諸国がウクライナに巨大な武器援助を行い、武装化し、ロシアにかつてない制裁を科し、ロシア経済を破綻させようとしています。残念なことに、ウクライナ国民を守るべきゼレンスキー大統領自らが徹底抗戦を掲げ、米欧日の西側諸国に武器援助を要求し、国内では若者たちを徴兵し根こそぎ動員し、ロシア軍との戦闘に全力を挙げるよう促しています。日本政府やメディアも、停戦や和平を主張するのではなく、一日中、ウクライナ支援を促し、戦争熱を駆り立てています。
 私たちは、ウクライナの戦争拡大や徹底抗戦にも、西側諸国・メディアによる戦争の煽動にも断固反対します。

II

(1) このような状況下で、日本の国会は3月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領の要請でオンライン演説の場を提供しました。一部で反対や慎重論が出ましたが、戦争熱の煽動の中ですぐに沈黙させられました。極めて危険なことです。彼の演説は、停戦や和平を目的とするものではありません。逆に、戦争拡大への支持取り付けが目的でした。交戦国の一方の大統領の好戦的発言を一方的に垂れ流すことは異常です。
 岸田首相は、この演説を全面支持し、「極めて困難な状況の中で、祖国や国民を強い決意と勇気で守り抜こうとする姿に感銘を受けた」と述べ、礼賛しました。「ロシアの暴挙を決して許してはならず、ウクライナの方々を国際社会全体で支えていかなければならないとの思いを新たにした」とも語りました。日本の国会が戦争を礼賛したのです。私たちは、改めて反対の意を表明します。
 かつて日本では天皇制軍国主義が「一億玉砕」「最後の一人まで」「本土決戦」の名の下に国のために死ぬことを国民に迫りました。戦後、私たちはそれを根本的な間違いと考え反省し、その証として憲法9条を生み出しました。憲法制定後、自民党が繰り返す9条改憲策動を阻止して守って来ました。ところが、いま再び国のために死ぬことを讃え、ゼレンスキー大統領の徹底抗戦に熱狂しているのです。反省はどうなったのでしょうか。

(2) 今回の演説は、今、米欧日の西側諸国とゼレンスキー大統領が共同で推し進めている対ロシア戦争強化拡大政策の一環です。それは、バイデンのヨーロッパ歴訪と連携したものです。バイデンは対ロシアの前線基地になっているポーランドで戦争を煽り、ブリュッセルでのNATO、G7、EUの各首脳会議に出席し、対ロシア戦争を激励し、追加制裁を決定しようとしています。
 ゼレンスキー大統領の演説はどれも戦争拡大への支持要求で貫かれていました。米国や英国などの議会では「飛行禁止区域」の設定、戦闘機の供与をはじめ武器・弾薬の供与、ロシアに対するさらなる制裁を強く求めました。バイデン大統領には世界のリーダーになってほしいと参戦を促す主張を行いました。イスラエル国会でも同国の対空ミサイル・アイアンドームを送ってほしいと要求しました。ドイツでは、ロシアとの経済関係を深めてきたことを糾弾しました。ロシアに戦費を稼がせた上、ウクライナのNATO加盟の要求を認めず、ウクライナと欧州の間に「新たな壁」をつくることに加担してきた、とドイツ政府を居丈高に非難しました。今や、西側政府やメディアもゼレンスキー大統領の戦争拡大を批判できない非常に危険な状態に陥っているのです。
 言うまでもなく、「飛行禁止区域設定」はロシアと米・NATO諸国との未曾有の全面戦争を意味します。ゼレンスキー大統領は、米・NATO諸国の参戦を声高に要求しています。このような人物に、日本の国会は演壇を提供したのです。憲法9条の平和主義原則の観点からも許されないことです。また彼は、「国際機関も国連安保理も機能しなかった」と批判しました。これも国連の枠組みを変えよ、米・NATO諸国が自由自在に軍隊を動かせるようなものにせよとの傲慢極まりない要求です。

(3) 「プーチンは悪魔、暴君で、ゼレンスキー大統領は英雄だ」「米・NATOはウクライナを支援する国連憲章の擁護者、平和の使者だ」――これは、西側諸国や西側メディアが作り上げた虚構です。こういう見方に私たちは反対です。異論を頭から認めない異常な雰囲気が跋扈しています。反プーチンの熱狂はウクライナ戦争を欧州戦争、世界戦争に拡大させかねない極めて危険な状態まで来ています。
 今、ゼレンスキー大統領はすべての市民に戦争への協力を要求し、兵士を招集しています。そのことをメディアは英雄主義と称え持ち上げています。包囲され、奪還のめどもないマリウポリで徹底抗戦に30万の市民を巻き込むことを推奨しているのです。現地ではネオナチ部隊が、避難しようとする市民を銃撃していることも報道されています。ゼレンスキー政権は親ロシアの政党を禁止して弾圧し、街頭では戦争への協力を拒む市民に対するリンチさえ行っています。ゼレンスキー政権がネオナチと親和的な右翼的政権であることを忘れてはなりません。
 だから、私たちは、ウクライナ政府とその人民を区別する必要があると考えます。ウクライナの人民は戦争の被害者です。しかし、ゼレンスキー大統領とその政府はそうではありません。私たちはゼレンスキー政権を支持しません。確かに戦争を始めたのはプーチン大統領です。しかし、ゼレンスキー大統領にも重大な責任があります。ゼレンスキー大統領は両国の戦争回避のために何の措置も取りませんでした。彼がNATO加盟を断念し、停戦合意を尊重する姿勢を打ち出していればロシアの侵攻を防げたでしょう。しかしこれとは逆に、ウクライナは今年1月までに軍事費の3年分にあたる膨大な量の対戦車ミサイルや対空ミサイル武器・弾薬を米から受け取り、戦争体制を整えていました。戦争回避の行動を一切しないで、逆に戦争準備をしてきたのです。ウクライナの人民の命と生活を犠牲にしてでも米・NATOと結託してロシアを包囲し攻撃する前線基地になるという博打に出たのです。それが今回の戦争の直接の原因であることは間違いありません。
 それだけではありません。メディアはほとんど報じませんが、東部2州の親ロシア地域では現在も市民がウクライナ軍のロケットや砲撃にさらされています。しかも彼らは8年もの間、ゼレンスキーの国家親衛隊アゾフ大隊などのネオナチ部隊の襲撃でこれまでに1万4千人も殺されました。ゼレンスキー大統領はミンスク合意で約束した停戦と特別の自治権を破棄して、これらのロシア系住民への攻撃を正当化しました。ゼレンスキー大統領はこれに関しても責任があります。

(4) しかし最大の責任は米政府にあります。ゼレンスキー大統領も、結局は米政権に迎合し、バイデンと一体になってロシアとの戦争挑発と緊張激化を推し進めてきたのです。
 米政府は3か月も前から「ロシアがウクライナに戦争を仕掛ける」と執拗に「予言」しましたが、実は追い詰め挑発してロシアを暴発させたのです。ロシア側は昨年12月にウクライナのNATO加盟、東方拡大をやめ、ミンスク合意を履行するよう繰り返し求め、そうならなければ軍事的措置を取らざるを得ないと警告しました。バイデンはそれにゼロ回答を繰り返し、戦争を暴発させたのです。
 米国も英国も停戦や和平には一切関心がなく、徹底抗戦せよとウクライナに武器を送ることしかしていません。彼らが後押しする限り、ウクライナが停戦に進むのは難しいのです。英ジョンソン首相はとうとう「制裁はロシアの体制転換(政権打倒)のためだ」と公言するまでになりました。相手を打倒するまで戦争しろというのです。その陰で、これらの国は、武器を大量に売って軍需産業が巨利を得、石油の値段は高騰し、石油メジャーが大儲けしています。また制裁を通じてロシア経済に打撃を与え弱体化させています。ウクライナの人民の犠牲の上に米欧諸国は莫大な帝国主義的な利益をもぎ取っています。

III

(1) 今岸田政権がなすべきことは、戦争を煽ること、ウクライナに徹底抗戦させることではなく、ロシアとの即時停戦・和平を働きかけることです。
 ところが日本政府は真逆の動きをしています。ロシアのウクライナ侵攻に乗じて軍用ヘルメット・防弾チョッキなど軍装品を紛争当事国であるウクライナに送りました。これは武器輸出三原則の公然たる蹂躙であり絶対反対です。両国の戦争に手を貸しただけではありません。ウクライナの市民を兵士に仕立て上げるのに直接手を貸したのです。現在ウクライナは成人男性の出国を禁止し、戦争に協力するよう義務付けています。そういう状況で兵士の装備をおくり協力することは、市民を兵士にさせ、ひいては戦死させることに手を貸すことです。憲法9条にも、これまでの日本の政治政策とも相反する行為です。
 日本政府はロシアに対する制裁に踏み切っています。しかし、これは国連の枠組みではなく、米を中心とする有志連合方式での私的な制裁に他なりません。ロシアの人民を苦しめるだけで、反対です。停戦のための外交的働きかけこそ必要だと考えます。
私たちは、メディアの戦争報道に怒りを覚えます。停戦や和平を求める動きをほとんど無視し、今回の戦争の歴史的根源に言及する報道はほとんど皆無に近い状況です。むしろ、「ロシアの味方か」「ゼレンスキーやウクライナ批判は許せない」という報道を垂れ流し、ゼレンスキー大統領の戦争拡大と徹底抗戦を後押ししているのです。

(2) 私たちは、ウクライナ反戦は、自国政府の軍拡や戦争準備に反対するものでなければならないと思います。
 政府・メディアは、ここぞとばかり、一日中戦争を煽り立て、戦争熱を駆り立てています。「ロシアが日本に攻めてくる」「北海道が危ない」。いや、ロシアだけでなく、何の根拠もなしに「中国も突然侵略する」「台湾を攻める」「だから日本も軍事力増強が必要だ」と騒いでいます。「憲法9条では国は守れない」「9条が国防の障害」と9条改憲の主張が強まっています。安倍元首相や維新など極右勢力は米国と核兵器を「核共有」すべきだ、「非核三原則は昭和の遺物だ」と言い放ち、核武装を口にし始め、岸田自民党が「核共有」議論を開始するというまでエスカレートしています。日本を新しい対中軍拡、軍事国家化に突き進ませようとしているのです。
 ウクライナ戦争は、ゼレンスキー大統領がそもそもロシアとの平和的外交的関係を打ち立てず、米・NATOを後ろ盾に対ロ軍備拡張・対ロ戦争準備をしたことが原因です。今まさに憲法9条の存在意義が重要であることを示したのです。日本が対中軍拡・対中戦争準備に血道を挙げるのではなく、9条に基づき中国との平等互恵・善隣友好の関係、紛争の平和的外交的解決、平和共存を築くことの重要性を浮き彫りにしたのです。
 私たちは、対中軍拡、対中戦争準備に絶対反対です。9条改憲にも、「核共有」にも反対します。

2022年3月24日
リブ・イン・ピース☆9+25