米国はウクライナでの生物兵器開発疑惑に回答せよ
なぜ米政府はロシア国境近くで生物研究所を運営していたのか

(1) 3月7日、ロシア国防省はウクライナ侵攻中のロシア軍がウクライナ国内に米国は生物学研究所を設置し生物兵器の開発を行っていた証拠を見つけたと公表しました。2月24日に、ウクライナ政府は米国防総省の援助を受けた軍事生物学プログラムの痕跡をあわてて消去するよう命令を出したといいます。ロシアは直ちに国連安保理に緊急会合を開くように要請しました。
 これに対して、西側政府・メディアは、「ロシアが生物兵器を使用しようとしている」「窮地に陥ったプーチンの争点そらしだ」など、言いたい放題です。しかし、生物研究所があるのはウクライナですし、それを管轄しているのは米国です。バイデン政権に説明責任があるのです。また、英国防省は3月14日、西側メディアを通じてロシアがウクライナで化学兵器や生物兵器の使用を計画しているとの報道を世界中に配信しました。しかし、英国はかつてシリアで、英諜報機関の出先機関「ホワイト・ヘルメット」(医療チームの格好をしたイスラム武装組織)を使って化学兵器使用のウソ・デタラメ報道を行った前科があります。

 国連安保理緊急会合でロシアのヴァシリー・ネベンジア国連大使は以下のように発言しました。「ロシア国防省は、ウクライナが合成生物学の助けを借りて、ペスト、炭疽菌、野兎病、コレラ、および他の致死性疾患の病原体特性を強化することを目的とした、非常に危険な生物学的実験を行う少なくとも30の生物学的実験室のネットワークを構築したことを確認する文書を手に入れた。この研究は、米国の国防脅威削減庁(DTRA)、すなわち国防総省の国立医療情報センターによって資金提供され、直接監督されている。これらのプログラムの重要な役割は、オデッサのメチニコフ科学研究反ペスト研究所でBSL-3中央参照研究所によって果たされた, ウクライナ−キエフ、リヴォフ、ハリコフ、ドニプロ、ヘルソン、テルノポリ、ウジゴロド、ヴィニツィアなど、他の都市の研究センターも役割を果たした。研究結果は、米国の生物兵器計画の主要なハブであったフォートデトリックの米国陸軍医学研究所、ウォルターリード陸軍研究所、米海軍医学研究研究所、およびフォートデトリックの米陸軍生物戦争研究所に、米国軍の生物学的センターに送られた」。
 この他にキエフ、ハリコフ、オデッサでは高病原性H5N1インフルエンザウイルス(致死率50%)など鳥を通した感染症、コウモリの細菌・ウイルスによる感染症(ペスト、コロナ、ブルセラ病等)の研究が行われていました。これらウクライナの生物学研究室でのリスクの高い研究は、米国の専門家によって直接監督されていました。
 「私たちの国防省が手に入れた資料は、ウクライナのバイオラボのすべての深刻なリスクの高い研究が、外交的免責を持つ米国の専門家によって直接監督されたことを証明している。我々の国防省は、現時点では、西側のスポンサーによって要求されるように、キエフ政権は、ロシア側がBTWCの第1条に違反する米国とウクライナの直接的な証拠を得ることができなかったように、すべての痕跡を素直に覆っていると報告している。彼らはすべての生物学的プログラムの閉鎖を急いでいる。ウクライナの保健省は、2022年2月24日からバイオラボに堆積した生物学的薬剤を排除するよう命じた。私たちは、ラボの人員への指示から、コレクションの排除の順序は、彼らが取り返しのつかないほど破壊されるべきであることを示唆していると推測する。破壊証明書を分析した結果、Lvovラボだけでレプトスピラ症の病原体、30 ?ツラレミア、10 ? ブルセラ症の10 ? 疫病の5 ? を破壊したと言うことができる。320個以上のコンテナの合計が排除され。病原体の称号と過剰な量は、この作業が軍事生物学的プログラムの一環として行われたと考える理由を与える」。
https://libya360.wordpress.com/2022/03/11/unsc-session-on-biological-laboratories-in-ukraine-statement-by-vassily-nebenzia/

 生物・化学兵器の禁止に取り組む国連委員会の元メンバーで、ロシアの生物学者イゴール・ニクリン(Igor Nikulin)氏は、中国国際テレビ(CGTN)のインタビューで「ウクライナは米国の生物兵器の実験場となっている」と述べました。「ロシアはこのほど、ウクライナの2カ所の実験室だけでも、危険な病原体を入れた320の容器が破壊されているのを確認した。それは、米国が証拠隠滅のために処分したものとみられる。米国は、自身が「生物兵器禁止条約」に違反したことをよくわかっているはずだ」と示しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d85e367d327c4cec2b43562fdff61dd6ddecf089

(2) 3月11日に開かれた国連安保理緊急会合では、ロシア側は上のように問題を提起し、生物兵器禁止条約に違反しているのではないかと米側に回答を求めました。しかし、米国のトーマス・グリーンフィールド代表はこれらの指摘に一切答えず、「ロシアが安保理に会合を要請したのは、ウソをつき、偽情報を流すためだけである」と発言しただけでした。英国のウッドワード代表も「ウクライナが生物兵器プログラムを持っているという信頼に足る証拠は一片もない」と発言し、問題提起に取り合おうとしませんでした。ウソだというのです。しかし、そんなことで済むような問題でははありません。これは大量破壊兵器の問題であり、生物兵器開発禁止条約に違反する重大問題なのです。

 まず第1に、ウクライナに生物兵器関連の生物学研究所があり、米国の援助の下に研究がなされていることは米当局そのもの、国務省の国務次官でウクライナ担当のビクトリア・ヌーランドが認めています。3月8日の議会でマルコ・ルビオ上院議員に「ウクライナは化学兵器や生物兵器を持っているのか」を質問されて、ヌーランドは「ウクライナには、実際にはロシア軍が支配権を得ようとしているかもしれない生物学的研究施設があるので、我々はウクライナ人と協力して、彼らが近づくとロシア軍の手に落ちるのを防ぐ方法についてウクライナ人と協力している」と言いました。
https://mronline.org/2022/03/12/nuland-u-s-working-with-ukraine-to-keep-u-s-biological-research-facilities-out-of-russias-hands/

 ヌーランド次官は2014年のマイダン・クーデターを後ろで操っていた人物で、今もゼレンスキー政権と密接な関係にあります。その人物が、生物兵器と関係がある研究所がウクライナにはあり、ロシアが占領して支配するかもしれないのでその阻止のために動いていると認めているのです。上の安保理緊急会合でのロシア大使の発言にもあるように、これが2月24日にゼレンスキー名で生物学研究所に対して発せられた関係物質・細菌・ウイルスなどの破棄命令ではないのでしょうか。「ウソだ」の一言で言い逃れができるような問題ではありません。

 第2に、ウクライナで米が資金援助する生物学研究所が存在することは数年前から知られていました。2020年のコロナ起源説をめぐる論争の中でも米の生物兵器開発の中心であるフォートデトリックだけでなく、ウクライナの施設も名前が挙がりました。しかし、今回注目すべきは資金を国防総省が出していたことです。国防総省がパトロンの研究であるなら、ここで行われていた研究はまず生物兵器開発との関係があると疑わざるをえません。中国の武漢ウイルス研究所にも米政府が資金援助する研究がありました。そのことで米国内の共和党など右翼は生物兵器開発に手を貸したのかなどと大騒ぎをしました。しかし、それは国立衛生研究所NIHからの資金で保健福祉省に属する研究でした。ウクライナでは米軍当局が資金を出しています。一体何を研究していたのでしょうか。また、ロシアの国境に近いところで研究が行われていた(特にハリコフ、キエフ等)のはなぜなのでしょうか。ロシアとよく似た環境の中で、生物兵器として拡散させやすい鳥類、コウモリ、昆虫等を研究していたのでしょうか。
 第3に、ロシア国防省はウクライナ側の研究の中で大量のウクライナ人の血液サンプルを米国に送ったことを指摘し、ロシア人(ウクライナ人と近い)に感染させやすい感染症の研究をしていたのではないかと提起しています。これが本当なら恐ろしいことです。

 国連安保理では中国も米国は指摘された疑惑に応えるべきだとの態度を取りました。中国は、生物学的な軍事活動は些細なことではない、国際社会が米国に疑問を投げかけるのは合理的かつ正当だとの態度です。米国はウイルス漏出のリスクが高まり、国内での抗議のために海外に研究室を設立しはじめ、長年にわたり、ウクライナ、韓国、カザフスタン、グルジアの米軍生物学研究所に関連する致命的な漏洩事故があったと中国は指摘しています。生物兵器は、核兵器や化学兵器と共に大量破壊兵器と見なされています。生物兵器の開発の疑いは、速やかに調査されるべきで、ロシアの情報公開は非常に具体的であり、これらの資料の真実性は権威ある国際機関が率いる調査チームによって検証されるべきだと表明しています。
https://www.globaltimes.cn/page/202203/1254649.shtml

(3) ウクライナに対するロシアの軍事侵攻のもとで日に日に市民の死亡者が増えています。ロシア軍がハリコフやキエフの包囲から全面攻撃に出れば恐ろしい大虐殺の惨事になります。直ちに停戦するべきです。ロシアは軍隊は撤兵し、政治交渉で解決を目指すべきです。
 停戦と持続的和平が今こそ必要です。そのためには何をなすべきか――問題をこのように立てることが必要だと考えます。米欧日の西側政府のように武器・弾薬やミサイルや軍用品を送り、経済制裁を行い、ウクライナに徹底抗戦させることではありません。米・NATO諸国がウクライナのNATO加盟を断念し、「ミンスク合意」を復活させウクライナ東部のロシア系住民の安全を確保すること、ウクライナへの中距離ミサイル配備を中止することです。ロシアへの一方的非難ではなく、今回の戦争の歴史的原因を取り除くことが重要だと思います。

 しかし、これとは別に、ロシアの侵攻の過程で明らかになった生物兵器開発の問題について、米国はきちんと応える義務があると考えます。米国はイラクに大量破壊兵器があると騒いで戦争を仕掛けました。実際にはありませんでした。シリアに対しても化学兵器使用の疑いを突きつけましたが、ほとんどが反政府側の演出でした。中国に対しては武漢ウイルス研究所が新型コロナ起源とは関係が無いことが明らかになってからも、事実に関係なく研究所漏洩説を振りかざし今も尚非難を続けています。自分が疑わしいと決めつけたものにこのように一方的に攻撃し、痛めつけてきたのです。
 いま、ロシアから突きつけられたウクライナでの大量破壊兵器=生物兵器開発の疑惑について、当然世界中が納得できる回答を行わなければなりません。同時に、米国政府の「ウソだ」という説明を疑うこともなくオウム返しに繰り返しているだけの主要なメディアは、米国政府の広報機関に成り下がっていることを自己批判しなければならないと思います。

2022年3月15日
リブ・イン・ピース☆9+25