中東一帯を大規模戦争に巻き込む米の暗殺空爆を糾弾する
米は軍事行動を即刻中止し、中東から撤兵せよ
安倍は自衛隊派兵を中止せよ

 米軍は1月3日に、イラクのバグダッドで、イランの革命防衛隊・クッズ部隊の司令官で著名なガセム・ソレイマニ司令官とイラクの人民動員隊のアブ・マフディ・ムハンディス副司令官らを空爆で殺害した。この攻撃はトランプ大統領が直接命令した暗殺攻撃である。トランプと米軍の攻撃は、中東での米のイランに対する軍事攻撃を新しい段階に引き上げ、米の対イラン戦争の危険を急速に高めるものである。われわれはトランプの無謀極まりない軍事攻撃、新しい戦争の挑発を糾弾する。米がこの地域での軍事行動を直ちに停止し、米軍を撤退させることを要求する。

大規模戦争に道を開く米軍による暗殺空爆を許すな
 トランプはソレイマニ司令官が「多くの米国人殺害を計画していた」から殺害したとツィートし、ポンペオ国務長官は「米国民への差し迫った攻撃を食い止めるため」だったと説明した。トランプは「戦争を食い止めるための措置」と言っている。しかし、それは全くのでたらめだ。
 イラクでは駐留米兵とイラク人民兵などの間で戦闘が続いてきた。12月27日の米軍基地に対するロケット攻撃で米国人1人が死亡し、米兵4人が負傷した。米軍はこの攻撃に対して、29日に根拠も明らかにせずにイラク治安部隊の一部をなす「神の党旅団」の仕業と5カ所の拠点を空爆し25人を殺している。反発した民兵やシーア派の住民が31日に米大使館を包囲し抗議行動を行った。しかし、1月3日のソレイマニ司令官らへの米軍の攻撃、さらに4日に人民動員隊の「イマーム・アリ旅団」の指導者を標的にした新たな米軍の攻撃は、イランの軍事指導者とイラク政権にも近いシーア派民兵・治安組織の指導部を直接に狙ったもので、これまで行われたことがない本格的なレベルに攻撃をエスカレートさせるものだ。イランは「開戦」に等しいと厳しく非難し、「適切な機会に報復する」と宣言した。イラクでは米軍撤退の声が高まり、主権を無視されたイラク政府も「米との関係を見直す」と言い始めた。
 トランプやポンペオは、「大規模な攻撃が準備されていた」「それを抑止するための攻撃だ」という。しかし、現在の緊張状態を作り出しているのは米の核合意破棄と軍事力による一方的な屈服を迫る政策だ。逆に、イランは米を核合意に戻すために、極めて粘り強く外交と政治交渉を試みている。何のメリットもない挑発と軍事拡大に進むはずがない。今回の攻撃も31日の大使館への抗議行動に激昂したトランプの決断と報道されている。「差し迫る攻撃への抑止」などいいわけに過ぎない。イランの英雄的な軍事指導者を暗殺すれば、報復が起こるのは当たり前だ。米の暗殺攻撃こそ戦争の危険性を限りなく高める危険極まりない行動だ。米は急速に戦争態勢を強めている。即座に3500人の空挺部隊緊急派遣部隊をクウェートからイラクへ送り込む決定をした。誰が挑発し、戦争に備えているか明らかだ。

トランプの政治利益にために中東と米兵の命を弄ぶな!
 この攻撃でいったい誰が利益を得るのか。トランプは、イランに打撃を与えることで、1月に始まる自分の弾劾裁判から目を反らし、大統領選挙に向けて米国内の保守強硬派の支持を強化しようとしている。そのための生け贄としてイラン軍事指導者を暗殺したのだ。そして、もしイラク国内の米軍部隊や中東各地の米軍が攻撃を受けても、被害は限定され、かえって強硬姿勢は選挙に有利と考えている。選挙のために中東の人民と米兵の命を弄び、戦争をしかけるのは歴代米政権の常套手段であった。
 トランプは自分から攻撃しながら「戦争にはしない」と都合のいいことを言っている。全面戦争は選挙にも不利になるからだ。しかし、そんな根拠のない見通しなど成り立たない。この攻撃は明らかに中東全域での米・イラン間の軍事的緊張を高めずにはおかないだろう。
 まず初めにイラクでの軍事衝突の危険。巻き込まれることを恐れてイラク政府も対米姿勢を見直している。それだけではない。イラクだけでなく、イエメン、シリア、レバノンなど中東各地で軍事衝突が起こる可能性がある。そしてイランと米軍の直接衝突の可能性も否定できない。いずれの地域でも小規模な衝突や偶発的な事件が一挙に大規模な戦闘に拡大しかねない、そういう危険な情勢を米国が作り出したのだ。トランプは危険性を過小評価してパンドラの箱を開けた可能性がある。われわれは自分の利害のために中東全域で人民大衆の命を危険にさらし、戦争の危険に突き落としたトランプの蛮行を糾弾する。

緊張のただ中に自衛隊を派兵するな! 米軍に加担するな!
 安倍首相はトランプの暗殺攻撃について質問に答えず、ノーコメントでいる。安倍首相らしい卑怯な対応だ。平和主義憲法を持つ日本の首相として安倍首相は、イラクの主権さえ無視した暗殺攻撃を公然たる侵略として非難すべきだ。しかし実際には正反対で安倍首相は米の攻撃には反対しない。イランとの関係を悪化させることを恐れて、支持と言えないだけだ。
 しかし、忘れてはいけない。ことは遠い中東のことではない。安倍首相は12月27日に閣議決定だけで、国民にはかりもせずに自衛隊を中東に派兵することを決めた。1月から哨戒機による哨戒飛行を開始し、1月中にも駆逐艦を送るつもりだ。米軍は、自衛隊がイランの軍事行動を監視し、押さえ込むのに協力すると思っている。実際そうなるだろう。
 しかし、トランプの暗殺攻撃による想定外の軍事的緊張の突然の高まりの中で、自衛隊の活動をイランが直ちに妨害・障害・敵対と受け取る可能性が大きくなってきた。米がイランとの直接の衝突に突き進むときには、安倍政権は自衛隊を参戦させる危険が高まる。われわれは自衛隊の中東派兵について、ことが起これば安倍政権は「調査・研究」などかなぐり捨て、一気に海上警備行動から戦争法発動の「重大影響事態」「存立危機事態」踏み込む危険があると警鐘をならした。米の対イラン戦争への自衛隊の参戦を阻止しなければならない。
 われわれは日本が再び侵略行為に加担し、戦争に参加することを絶対に許さない。日本政府は米軍のイラク・イランにおける軍事行動の中止を要求し、自衛隊の派兵を直ちに中止すべきである。

2020年1月5日
リブ・イン・ピース☆9+25