[2016夏の参院選 安倍政治にNO!を](2)
生活破壊を許すな
「財源」は大企業・グローバル企業から取れ
  
 参議院選挙の重要な争点の1つが、安倍政権の生活切り捨て政策です。
 学費を下げ、奨学金の無利子化と給付型奨学金奨学金を創設し、経済的に苦しい人でも大学に進学できるようにすること。保育所を増設し保育士の待遇を改善し、入所を望む子どもをすべて受け入れられるようにすること。介護職員の労働条件を改善し、介護サービス充実させ、すべての人と家族が安心して老後を過ごせるようにすること、‥‥。多くの人が望んでいます。
 しかし、安倍政権は、口先のキャッチフレーズを並べるだけで、全く取り組む気はありません。その場合に必ず言われることは「財源」です。曰く、「そんなことをすれば税金がものすごく高くなる」「消費税を何十パーセントにもしないとできるはずがない」、と。
 それどころか、今のままでも財源は足りず、税金は上げ、生活保障の制度は切り下げなければならないというのです。「今後も少子高齢化が進むから、自己負担が増えるのは仕方ない」、「日本の借金はGDPの倍の1000兆円もあるのだから」、と。朝日新聞など「リベラル」なマスコミも、「社会保障のために消費税を上げるべき」と主張します。
 本当にそうでしょうか? 私たちの生活がこれほど苦しくても、「財源がない」から仕方なく、今後もっと苦しまねばならないのでしょうか?
 そんなことはありません。大企業・グローバル企業と高所得者は莫大な利益を得ておきながら、手厚い優遇を受けているのです。しかも、彼らはそれだけでは満足せす、法の網をかいくぐって非合法ギリギリのところで莫大な税金逃れを行っています。「財源」を問題する前に、まず彼らに利益に見合うだけの負担をさせるべきです。

大企業・グローバル企業への減税と税金逃れ
 企業の利益にかかる法人税率は、最も高かった時の1984〜87年度は43.3%でしたが、徐々に引き下げられ2016年度からは23.4%、ピーク時の半分になっています。
法人税率の推移(財務省)

 しかも大企業はこの減額された税金さえまともに支払っていません。様々な「租税特別措置」を駆使して税金逃れを行っているのです。2012年度の実効負担率(支払った法人税の税引前利益に対する割合)は、法定税率の25.5%に対して、資本金1〜5億円の企業の負担率は25.44%、同10億円以下は23.22%、同100億円以下は19.43%、同100億円超はたったの11.54%です。企業の規模が大きくなるほど、負担率は下がるのです。
三井住友フィナンシャルグループ 0.002%
ソフトバンク 0.003%
みずほフィナンシャルグループ 0.10%
三菱UFJフィナンシャル・グループ 0.31%
ファーストリテイリング 6.92%
 2013〜14年3月期の2期通算の実効負担率ワースト5社は表の通りです。0.002%とか0.003%とか、全く信じがたい数字です。「日本の法人税は高い」というのは大ウソなのです。
 先頃暴露された「パナマ文書」は、世界に大きな衝撃を与えました。世界中の大企業や富豪たちがタックスヘイブン(租税回避地)を利用して莫大な税金逃れを行っていたのです。
 タックスヘイブンにある金融資産は、2014年時点で24兆ドル〜35兆ドル(約2570兆円〜約3750兆円)に上り、毎年1000億ドル〜2400億ドル(約10.7兆円〜約25.7兆円)の税金逃れが行われています。日本銀行の発表によると、日本企業は2015年末時点でタックスヘイブンとして有名なケイマン諸島に、74兆4千億円もの投資を行っています。これは「外国子会社配当益金不算入制度」を悪用したものです。「外国にある日本の子会社は既に所在国に税金を支払っているのだから、日本には支払わなくてもよい」という口実で外国子会社の利益の95%が税額控除されています。パナマ文書には、今明らかになっているだけで、少なくとも約20社の日本企業と約230人の日本人の名前が明記されています。

あふれかえる企業の内部留保と配当
 日本の全産業の経常利益は、2007年度は53.5兆円でしが、リーマンショック後の09年度に32.1兆円まで減少した後、14年度には64.6兆円まで増大しています(07年度比20.7%増)。
 経常利益は法人税の支払いなどを経て純利益となります。純利益は配当と内部留保とに分かれます。配当金額は07年度14.0兆円、10年度10.4兆円、13年度14.4兆円、14年度16.9兆円。配当金への課税は一律20.42%で、残りの8割近くが株主の懐に入ることになります。
 企業の内部留保は増加を続け、2014年には354兆4千億円にまで増大しました。しかもその約6割の210兆2000億円が現金・貯金です。法人税を減税され、税金をまともに払わず、企業がどれだけ貯め込んでいるか、ということを示しています。
企業収益等の動向について 平成27年10月16日 麻生副総理兼財務大臣提出資料

高所得者への減税と税金逃れ
 相続税の最高税率は、1988年1月以降適用分では70%でしたが、15年1月以降適用分からは55%に減額されています。
 所得税+個人住民税についても同様です。84〜86年度は15段階に区分され、最高が88%(所得税70%)でしたが、15年度以降は7段階で最高も55%(所得税45%)にまで減額されています。この間、最低税率は15%のままで変わっていません。
 さらに、高所得者の多くは「金融所得の分離課税」という制度を利用して税金逃れを行っています。株式譲渡や配当、利子などの金融所得は総所得に合算されるのではなく、分離課税になり、その税率は20%です。高所得者は、こうした金融所得が中心なので、税率は20%に近づいていくことになります。肩書きだけの経営者になって配当金という形で所得を得ることも可能です。例えば2013年度に100億円以上の高額所得者が支払った所得税は、法定税率の40%に対して、たったの11.1%に過ぎません。

法人税・所得税の減税の一方、消費税増税で生活を直撃
 以上のような結果として、法人税は最大だった1989年度の19.0兆円から、2015年度見込みの11.0兆円まで半減しました。所得税も最大だった1991年度の26.7兆円から2015年度見込みの16.4兆円まで減少しています。
 その一方で、私たちの生活を直撃する消費税が1989年4月に税率3%で導入され、97年4月には5%に、2014年4月には8%に引き上げられました。政府の消費税収入は89年度の3.3兆円が15年度見込みの17.1兆円へと急増しています。それだけ、私たちの生活に重くのしかかっているのです。
主要税目の税収(一般会計分)の推移(財務省)

 安倍政権は選挙での反発を恐れ、消費税率10%への引き上げを先送りしましたが、自民党政権が続く限り、今後も消費税をどんどん増税しようとすることは間違いありません。

「財源がない」はもうたくさん! 取るべきところから税金を取れ!
 私たちは、「財源がない」「1000兆円の負債を抱える財政危機」をさんざん言い聞かされ、消費税増税を押しつけられ、医療費や介護費の負担増や奨学金の高利ローンを背負わされ、保育園には入れなくても我慢するよう強いられ、貧困と格差の拡大にさらされてきました。
 でも、以上のような減税と税金逃れの恩恵をたっぷりと受けてきた人々に「財源がない」などと言われたくありません。「財源」を問題にするのは、まず取るべきところから税金を取ってからにすべきです。来る参議院選挙を、「企業と高所得者には減税と税金逃れ容認」、「私たちには増税と生活切り捨て」の安倍政権に、きっぱりとNO!をつけつけるための選挙にしましょう。

2016年6月21日
リブ・イン・ピース☆9+25