米は対北朝鮮戦争挑発をやめ、無条件で交渉を行え
安倍政権は米の軍事行動の後押しをやめろ
  

[1]国連制裁決議反対。米は北朝鮮との無条件交渉に入れ
(1)9月15日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は8月29日に続いて再び日本上空を飛び越える中距離ミサイル火星12の実験を行った。ミサイルは3700キロを飛翔し太平洋に着水した。グアムの米軍基地を射程内にとらえていることを実証した。
 国連安保理は、米日韓だけでなく中ロも含めて北朝鮮のミサイル発射を非難し、11日の安保理決議の完全履行を確認した。
 安保理決議と北朝鮮のミサイル・核実験の応酬は政治的・軍事的緊張を高めながら、悪循環を呈しつつある。
 われわれは、北朝鮮の指導者と国家を滅ぼすことを目的とする米韓共同作戦計画OPLAN5015を米国が放棄しない限りこの悪循環を止めることはできないと考える。今年3・4月に行われたキー・リゾルブ、フォールイーグルや9月のウルチ・フリーダム・ガーディアンなど大規模共同軍事演習はこの作戦計画に基づいている。これこそが脅威の根源である。
 北朝鮮は目と鼻の先で、数万人の兵員を動員して自国に侵攻する実戦演習を四六時中見せつけられていることになる。北朝鮮指導部は、米の侵略によって国家を崩壊させられ元首が処刑・殺害されたイラクやリビアのようにならないために、核武装し米国を直接攻撃できるミサイルを持って防衛するしかないと考えているのだ。
 もちろんわれわれは、このような極度に緊張を高める北朝鮮の現在のやり方を支持するわけにはいかない。しかし、北朝鮮を一方的に悪者扱いにし、輸出入に重大な制約を課し追い詰める安保理決議は、交渉といいながら実際には一方的な要求を押しつけるものであり断固反対する。双方の同意なしには交渉は不可能であり、力や圧力によって相手を屈服させ、交渉を押しつけることはできない。

(2)国連安保理は9月11日、北朝鮮の核実験に対して制裁強化の決議を採択した。前回(8月6日)は石炭を含め海産物など輸出の禁止でドル収入の制限による制裁だった。しかし今回、米は石油の全面禁輸、労働者の雇用禁止も含む全面的な制裁案を提起した。北朝鮮の国民を含め産業そのものに大打撃を与え、経済を大混乱に陥れるものだ。ロシアと中国は米の提案に反対し、修正を求めた。全面制裁案は北朝鮮の経済を崩壊させかねないもので、米に代わって中国が北朝鮮経済を崩壊させ、敵対と恨みを受けるなどあり得ないからだ。
 北朝鮮の隣接国である中国やロシア、韓国が朝鮮半島での戦争を避けたいと考えるのは当然だ。米は、北朝鮮に対して軍事行動を取るか、交渉の条件を引き下げてでも交渉するかの間で動揺している。核とICBM双方の放棄でなく、どちらか一方の放棄で交渉する線も出てきた。ところが日本は、“今は交渉の時ではない”“圧力を強めて追い込むべきだ”と強硬姿勢一本やりである。結局安保理は石油輸入は現状を上限、海外労働者の新規雇用制限、繊維品の輸出禁止など制裁部分強化案を全会一致で採択した。部分とはいえそれでも北朝鮮の輸出の9割、石油関連製品輸出の3割を禁止する内容で、北朝鮮に大きな影響を与える。

(3)私たちは米朝に無条件で、直ちに交渉を行うように求める。米日と北朝鮮の現状では交渉を巡る隔たりは大きい。交渉に入ることが極めて困難で、緊張は高まるばかりである。交渉のためには北朝鮮を突き放すだけの安保理の制裁決議は撤回すべきだ。朝鮮半島での戦争を回避し、安定と平和にむけて双方が可能なことは何でもすべきである。とりわけ、真っ先に軍事的政治的緊張緩和を行い、米韓日の軍事力による威嚇と米韓軍事演習、核実験とミサイル実験の同時停止を行い、そのうえで初めから結論を決めずに対等の立場で交渉に入るべきだ。私たちは、この交渉が進展し、朝鮮半島の平和と安定が前進するためには、北朝鮮の現政権を認める米朝平和条約締結と朝鮮半島からの米軍の撤退を含む軍事的安定化と非核化に向けた取り組みが不可欠であると考える。

[2]脅威の根源は日米韓にある
(1)北朝鮮は8月29日に火星12号と思われる中距離弾道ミサイル火星12号を発射した。ミサイルは北海道上空550キロの宇宙空間を通過し、はるか東方1180キロの太平洋上に落下した。さらに、9月3日にはこれまでの10倍以上の規模、160キロトンに及ぶ核実験を実施した。北朝鮮はこれを水爆実験だと公表した。
 私たちは北朝鮮のミサイル発射や核実験には反対だ。事故で落下する危険や落下点に船舶などがいた場合に被害を及ぼす可能性を否定できない。核実験場付近の環境破壊も否定できない。なにより朝鮮半島の緊張緩和と安定に逆行する影響を与えると考える。
 しかし、日本政府やマスコミ各社のように、北朝鮮が一方的に武力の威嚇と緊張、戦争の危険をあおっているかのような決めつけや非難の繰り返しによる宣伝や、まるで戦争前夜であるかのような振る舞いには断固反対する。トランプ大統領や安倍首相は北朝鮮が「ならず者国家」であり「悪の権化」で、場合によっては戦争をふっかけて滅ぼしても仕方がないような宣伝をしている。私たちは、日米韓の側が、北朝鮮のミサイル発射や核実験による威嚇を上回って、戦争の脅し、軍事挑発を繰り返していることを、まず問題にすべきであると考える。

(2)現実に北朝鮮に脅威を与えているのは日米韓の側だ。8月21日から31日まで米韓合同軍事演習が行われた。これには韓国軍5万人と米軍1万8千人が参加した。3・4月に行われた共同軍事演習キー・リゾルブ、フォール・イーグルや今回のウルチ・フリーダム・ガーディアンは全て米韓共同作戦計画OPLAN5015に基づくもので、北朝鮮への先制攻撃戦争の実践訓練である。北朝鮮に対する先制攻撃−−馘首作戦、核開発、ミサイル開発関連施設の先制攻撃など−−つまり実際の戦争の予行をやっているのだ。日本も米軍の爆撃機B1Bと共同訓練するなど、米韓軍事演習と連携する体制をとっていた。この大規模な軍事力による威嚇は、北朝鮮の側に不断の緊張を強いて威嚇し、軍の対応で資源を消費させることを狙って行われている。
 これらの演習が北朝鮮に強い脅威を与えていることをマスコミは報道しない。しかし、900キロ離れたところから数十発の巡航ミサイルで攻撃できるB1B爆撃機をグアムから朝鮮半島に飛行させる。さらに、B1Bと一緒にレーダーに映らないと言われるF35戦闘機を飛ばせる(過去にはステルス爆撃機B2やF22戦闘機も飛ばした)。北朝鮮から見
れば、レーダーに映らない攻撃機にいつ攻撃されるかわからない状態は脅威そのものである。それだけではない。空母艦載機だけで北朝鮮の最新鋭戦闘機の力を上回る攻撃力を持つ。空母に随伴するイージス艦には150発の巡航ミサイルが積まれ、潜水艦にも100発以上のトマホークが積まれ、いつでも発射できる状態にある。たとえすぐに攻撃はしないだろうと思っても、大規模な演習をすぐ近くでやられれば、切迫した脅威を感じずにはいられない。

(3)脅威をもてあそび、戦争の威嚇で脅しているのは北朝鮮の側ではない。圧倒的な力を持つ米と日韓の側がより大きな責任を負っている。北朝鮮の側が「米の様子を見る」と言った8月の半ばに、中国やロシアが主張したように軍事挑発である演習をやめて対話を呼びかければ、道は開けたかもしれない。安倍やトランプは「対話のための対話は意味がない」「軍事オプションがなければ経済オプションも効果がない」等と言っているが、力と威嚇が対話につながらず、安定化に向けてどこにもめどがない、戦争に向かうしかないことは明らかである。力による押しつけこそが北朝鮮に国家の防衛のためには核ICBMを持つしかないと考えさせている。
 私たちは歴史的にも常に米韓の側が北朝鮮を威嚇し続けてきたことを忘れるわけにはいかない。1953年7月に締結された朝鮮戦争の休戦協定は、3か月以内にあらゆる外国軍の撤退および平和的交渉によって解決する、朝鮮半島に新しい兵器を持ち込まないと決めた。しかし、米国は休戦協定に違反して朝鮮半島から撤退せず、逆に米韓軍事同盟を結んで朝鮮半島に居座った。また、核兵器を韓国に運び込み、自ら休戦協定の13条dには従わないと宣言した。休戦協定を破ることで、今なお北朝鮮に戦争の脅威を与え続けている。核とミサイルの問題と同時に、この問題を政治的に解決しなければ根本的な意味で政治的安定と平和はできない。

[3]「ミサイル落下」を口実とした、米の対北朝鮮先制攻撃の危険
(1)もう一つ指摘しなければならないのは「北朝鮮からの先制攻撃はあり得ない」ということだ。この常識的ではあるが、最重要のことが日本政府やマスコミでは決して語られない。
 北朝鮮はどうして必死になって核とICBMの保有を追求するのか。それは米日韓を核で攻撃するためではない。先に述べたように、イラクやリビアの例を見て、核兵器を持たなければ米国から攻撃され国家を壊滅させられると教訓を導き出しているのだ。核ICBMを持っていれば、たとえ少数でも反撃を恐れて米が先制攻撃を思いとどまるだろうと考えている。彼らは自衛のための核戦力を追求している。下に述べるように北朝鮮の通常戦力は貧弱で時代遅れであり、自分から先に攻撃したからと言って他国を屈服させたり占領したりすることはできない。
 北朝鮮と米韓、それに日本を加えた軍事力のバランスは圧倒的に日米韓に有利である。特に空軍力では圧倒的な差がある。北朝鮮の側は旧式機ばかり、第4世代以降の近代的性能を持つ戦闘機はミグ29が20機程度あるに過ぎない。海軍も陸軍も装備は旧式の装備ばかりである。もし戦争になれば、イラク戦争のときのように数日間から短期間で「決着」がつくだろう(これはたとえ北朝鮮の側から先制攻撃しても同じだ)。圧倒的な空軍力で作戦中枢を叩かれ、制空権を掌握されれば、組織的に戦えなくなる。その上、ステルス機からの攻撃で狙い撃ちに合う。戦争そのものは一方的なものになる可能性が大きい。
 しかし、北朝鮮は通常戦力では圧倒的に旧式で不利なのを覚悟のうえで、資源を核ミサイル(核とミサイル開発)に集中して、自国の安全保障をそれにかけている。これに加えて、米日韓の攻撃でつぶされるまでに発射する中距離ミサイル、多数の短距離ミサイル、ロケット弾、長距離砲による報復攻撃が要になっている。米韓はたとえ戦争では圧倒的な勝てても、韓国、日本、グアムなどの膨大な被害を無視することはできないから戦争には踏み切れない。北朝鮮の軍事力は核ICBMとミサイル・ロケット・長距離砲の報復能力を中心に置く軍事力であり、弱者の側からの防衛的なものである。たとえもし北朝鮮が核ミサイルを持ちそれで先制攻撃をしても、相手に大きな打撃ではあるが限定的な被害を与えるにとどまり、反対に北朝鮮は国家そのものが崩壊するうえ、核攻撃も含めて国土が回復しがたい被害を受けるであろう。北朝鮮にとって先制攻撃によるメリットなど何もない。

(2)8月に北朝鮮が行ったグアム近海にミサイルを落下させるという脅しについていえば、もしもグアムの領海内に落下すれば米は迎撃できるし、手段があれば迎撃するだろう。その場合、それを絶好の口実に北朝鮮に対する軍事攻撃を行う可能性が大きい。
 しかし、領海外の公海に落ちるなら通常は迎撃することはあり得ない。ところが、8月10日に小野寺防衛大臣がグアム付近に落下した場合の存立危機事態に言及したのは、領海に落ちた場合ではない。なぜなら北朝鮮の側から領海内にミサイルを撃ち込むことはあり得ないからだ。それは自殺行為に等しい。問題は、公海に落とそうとしたのに、トランプ大統領が「攻撃された」と宣言して迎撃し、北への軍事行動を開始する可能性があったからだ。小野寺は、米が攻撃されたと主張し、集団的自衛権に基づき日本に参戦(武力行使)を求めると予想し、世論の地ならしのためにわざと存立危機事態がありうるとしゃべったのだ。少なくとも、米軍がそれに基づいて北朝鮮への攻撃をはじめ、それに北朝鮮が反撃し全面的な戦争になったら、安倍政権は存立危機事態を宣言し、米の側に立って参戦するだろう。
 グアムにミサイルが来なくても、米は北朝鮮を攻撃することがありうる。「核ICBMで将来攻撃されるかもしれない」から「自衛のため」に攻撃できるというのだ。イラク戦争は、「イラクが大量破壊兵器を持ち、将来米を攻撃するかもしれない」からと「予防的自衛権」なるものを振りかざして戦争を開始し侵略を正当化した。実際大量破壊兵器などありもしなかった。同じように北朝鮮への先制攻撃を正当化する可能性がある。

[4]安倍政権は米の対北朝鮮戦争を後押しするな。「北」を口実に軍備を拡張するな
(1)北朝鮮の核実験後、9月3日に電話会談でトランプ大統領は安倍首相に「自分は100%晋三とともにある」と強調した。そして同時に、「もしアメリカが攻撃されたら、日本はわれわれを助けなければならない」と確認を求めた。これに安倍首相は「日本は100%アメリカとともにある」と相互防衛、存立危機事態に基づき軍事行動への参加(参戦)に応じたといわれる。事態が始まる前から安倍首相は参戦を約束しているのだ。私たちは、安倍首相の戦争参加表明を断固糾弾する。
 最近自衛隊の元高官らがTVで北朝鮮と米の戦争に触れ、昔(湾岸戦争等)と異なり技術が進歩し、戦争はごく短期で終わるとし、その際に絶対に避けることができない韓国や日本の市民の膨大な犠牲を大したことでないかのように扱う例が目に付く。「被害が受け入れられるなら」戦争は簡単だ−−これが政府や自衛隊内部での認識になっているならトランプの戦争に真っ先に参加する可能性が大きい。
 トランプは「もう時間はない」と軍事行動の切迫をほのめかし始めた。現実に何らかの軍事行動に踏み出す可能性は否定できない。しかし、そうなったらどうなるのか。“米が軍事行動に踏み切ったら安倍首相はどう判断するでしょうか”などと他人事のように言うメディアもある。もし戦争になったら、朝鮮半島だけでなく、日本も含めて数十万とも100万とも言われる市民が殺される。そのことがわかっているのか。

(2)今回のミサイル発射でも、日本政府は東日本一帯にJ−アラートを発し、全部の放送局から臨時ニュースを流し、その結果、一部の電車、学校等が休止、休校した。安倍首相は前回、「我が国を飛び越えるミサイル発射という暴挙は、これまでにない深刻かつ重大な脅威だ」と強く非難した。核実験後に安倍首相は「今は対話の時ではなく、圧力をかけていくべきだ」「異次元の圧力を課すべく取り組みを進める」と主張した。しかし、ミサイルは実験であり、日本に向けられたものではない。そのことがわかった上で安倍政権は、避難訓練などで子どもたちや地域を巻き込み、北朝鮮の脅威を国民の中にしみこませようとしている。そして何よりも地に落ちた内閣支持率回復のために最大限利用しているのだ。
 さらに、ミサイルと核実験を日本の更なる軍事力増強の口実にしていることも明らかだ。自衛隊は来年度概算要求でこれまで最大の軍事費を要求し、1600億円にのぼる陸上型イージス・アショアの導入、ステルス戦闘機F35等の導入を開始し始めた。一層の軍拡のために「中期防」見直しを始め、北朝鮮問題を利用して「敵地攻撃能力」である中距離ミサイル、巡航ミサイル導入の検討に入った。北朝鮮と中国の「脅威」を利用した大軍拡、実際に戦争することに備えた軍備増強を始めようとしている。
 朝鮮半島に現実にあるのは米による先制攻撃の可能性であり、それに加担して緊張をあおり、戦争に進んで参加する安倍政権の危険性である。朝鮮半島の平和と安定を望み戦争に反対する者は、まず第1に米による先制攻撃と安倍政権の協力の危険に反対の声を上げなければならない。

2017年9月17日
リブ・イン・ピース☆9+25