日本政府は、「破壊措置命令」=ミサイル防衛システム出動をやめよ!
−−国際的に孤立する、麻生政権の「北朝鮮の脅威」煽動

北朝鮮脅威を煽る麻生政権は、国際的に孤立
 政府は3月27日午前、安全保障会議で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のロケット発射に対抗して、ミサイル防衛(MD)システムで迎撃する方針を決定した。浜田防衛相は、自衛隊法82条2の第3項で規定された「破壊措置命令」を発令した。北朝鮮は4月4〜8日の間に「人工衛星」を打ち上げると予告している。
防衛相が初の破壊措置命令、北朝鮮のミサイル落下に備え(ロイター通信)

 麻生首相は、国民に対して「テレビ、ラジオ等の情報に注意してほしい」と呼びかけている。石原東京都知事は、“ミサイルが落ちた方が、緊張感が高まる”などという趣旨の発言をするに至っている。首相や都知事が公共放送を使ってデマを公然と流しているに等しい。マスコミもこぞって「Xデー」「見えぬ不安」「もしもの時」などと北朝鮮がミサイル攻撃を仕掛けてくるかのような不安を煽っている。こんなことが許されるのか。「通常はわが国領域内に落下することはない」(浜田防衛相)「通告通りなら日本への落下のがい然性は非常に低い」(河村長官)などといいながら、この問題を最大限利用し、国民の関心を集中させ、北朝鮮の脅威を煽っている。麻生首相は、小沢秘書問題の「国政捜査」に加え「ミサイル問題」をテコに支持率の回復を目指そうという腹である。政権浮揚のために、北朝鮮に対して迎撃を宣言するというのは、極めて悪質な火遊びと言う他ない。私たちは、「北朝鮮の脅威」煽動ための、「破壊措置命令」発令=ミサイル防衛システム出動を断固糾弾する!今すぐ撤回すべきである。
北朝鮮ミサイル 破壊措置命令…危機管理で政権浮揚期待(毎日新聞)
「間近に落ちた方が国民に緊張感」=北朝鮮ミサイルで−石原都知事(時事通信)

 だが、日本は国際的に孤立している。中国、ロシアは国連安保理での制裁に反対している。特にロシアは「衛星なら決議に違反しない」ことを明言している。韓国も「必ずしも制裁になるとは断定できない」と留保した。アメリカでさえ人工衛星発射で制裁に進むかどうかは不明だ。いまのところ「制裁と対話の両にらみ」だ。日本だけが迎撃のための「破壊措置命令」まで発令し、マスコミを挙げて北朝鮮非難の大合唱をしている。常軌を逸している。
北朝鮮:「衛星発射」通告 政府に手詰まり感も 安保理決議・独自制裁、実効性乏しく(毎日新聞)
<北朝鮮ミサイル>露「衛星なら決議に違反せず」 米に通告(毎日新聞)

お粗末なMDシステムで人工衛星を迎撃対象にするという異常さ
 なによりも、人工衛星を迎撃対象にするという異常さである。いや正確には「人工衛星の破片」だ。もちろん、北朝鮮が発射準備しているロケットに搭載しているのが、人工衛星なのかテポドン2なのかはわからない。北朝鮮は人工衛星と言っている。誰も公式には「テポドン2」とは言っていない。「複数の米政府筋」「政府高官」など「非公式筋」が「テポドン」と主張しているに過ぎない。政府も詰まるところ人工衛星であることを半ば前提にして、北朝鮮による人工衛星発射が安保理決議に違反するなどとウソを振りまいている。「北朝鮮に対し、いかなる核実験又は弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求する」(決議1718号、2006年11月)というのが安保理決議である。人工衛星の発射まで中止が要求されている訳ではない。中国、ロシアは人工衛星発射が安保理決議違反という立場を取っていない。
対北朝鮮:「衛星であろうと国連決議違反」麻生首相(毎日新聞)

 もしも発射されたものが人工衛星であれば、それを撃墜することは許されないし、戦争挑発行為であることを政府もよく知っているはずである。また仮に北朝鮮が人工衛星と称して実際にはミサイルを打つ可能性があるとしても、そもそもミサイル発射を規制する国際条約など存在しない。軍事的にではなく、政治的・外交的に解決すべきことである。北朝鮮敵視外交をやめ、日朝友好をすすめて解決すべきである。人工衛星を迎撃対象にすることそのものが成り立たないのだ。
 同時に、MDの技術からしても全くリアリティがない。政府筋の「撃ち落とせるはずがない」発言は事実を語っている。脅威を煽り「日本の対抗」を演出するためだけに、出来ないものを出来るかのように宣伝しているのである。「落下物に備えて」などと言っているが、落下物を打ち落とすことなどできない。2007年12月に海上自衛隊は、“こんごう”のSM3による「迎撃実験」に「成功」しているが、それは模擬ミサイルの発射時刻と発射位置をあらかじめデータに組み込んだ上で迎撃するという、ごく初期段階の実験に過ぎないものであった。人工衛星からの落下があるとしても、どれくらいの大きさのものがいつの時点で本体から離れてどのような軌道を描いて落下するかなど予測不可能である。しかも高度100〜300キロ程度にしか届かないSM3ではロケットに届かない可能性が極めて高い。迎撃半径20キロ程度のPAC3に至っては偶然発射地点近くに落下してくれないと発射することさえできない。だから、絶対に迎撃はできない。にも関わらず、あえて破壊措置命令を出したのは、北朝鮮がとんでもない国だと宣伝し、緊張を煽るためにほかならない。浜田防衛相が「わが国の領土の上を飛ぶようなものを打ち上げるのは極めて不愉快だ」と述べたことに表れている。全く法的根拠がない。不愉快かどうかで迎撃態勢に入られてはたまらない。
対北朝鮮戦争挑発の“道具”としての自衛隊法改悪に反対する(署名事務局)
北朝鮮ミサイル発射問題と日本の反戦平和運動の諸課題==日米両政府による金融・経済制裁強化に反対する(署名事務局)

本当の狙いは有事=国民保護態勢の実地訓練
 本当の狙いは、この事態を口実にして、有事態勢=国民保護態勢に国民を巻き込み、慣れさせることにある。2005年度に都道府県で、2006年度に市町村で「国民保護計画」作成が義務づけられて以降、有事・国民保護体制の構築は、計画から訓練の段階に入っている。2006年以降各都道府県で行われてきた国民保護図上訓練は最終段階に入っているといっていい。今回の「北朝鮮ミサイル問題」は実践対応する格好の材料だと考えているのではないか。
※内閣官房 国民保護ポータルサイト
  http://www.kokuminhogo.go.jp/
 http://www.kokuminhogo.go.jp/torikumi/kunren/index.html

 まず破壊措置発令を受け、政府は首相官邸に設置していた情報連絡室を、危機管理審議官が室長の官邸連絡室に格上げした。
 地方自治体では、この「北朝鮮ミサイル問題」を機に有事態勢を部分的に発動する動きがでている。極めて危険である。
秋田県では危機管理連絡会議を召集し、「ロケット部品」落下の可能性などを検討し、土日出勤の総合防災課の職員を増員するなどの対応をしている。しかも県内25市町村の約半数が担当部署を設けたという。内閣官房と市町村を光ファイバー回線で結ぶ緊急情報ネットワーク(エムネット)の構築を進めている。
 岩手県では、「状況が不明」「県内に落下」「被害が発生」−など、ケースごとに組織態勢や具体的な役割分担を検討している。
 青森県は、県国民保護計画に基づき、最も低い警戒レベルの「担当課体制」の警戒体制を取ることを決めた。これははじめてのことである。
 政府の意図は、自治体レベルで危機対策を実際に行わせることにある。
 神奈川県は、県職員や県立高校教員らに、「県内にミサイルが着弾した場合」として、夜間や休日でも全員職場に参集するよう要請していたことが明らかになった。県安全防災局危機管理対策課は、「北朝鮮のミサイル発射への対応体制について」と題する通知を県の各部局に出したという。神奈川県教育委員会が発した依頼文書の写しがリークされている。それによれば、安全防災局から本部連絡員教育委員会の連絡系統図に従い、「ミサイル」が発射された場合、校長会会長に電話で伝達し、各校長に伝達されることが通達されている。学校と教職員が巻き込まれるのだ。
北のミサイル着弾時 全員集合 神奈川県、発射準備受け通知(東京新聞)
国のミサイル情報、接続は市町村の一部…どうなる住民伝達(読売新聞)

戦争挑発の危険をもつミサイル防衛態勢出動をやめるべき
 自衛隊は、迎撃準備態勢に入った。MDシステムは、イージス艦からのスタンダード・ミサイル3(SM3)による大気圏外で迎撃と地上からのパトリオット・ミサイル3(PAC3)による迎撃によって構成される。防衛省は、SM3搭載のイージス艦「ちょうかい」と「こんごう」(佐世保)の2隻を日本海に展開する。さらにミサイル追尾のためイージス艦「きりしま」を太平洋に出動させる。
 「首都防衛」を謳って首都圏と浜松、岐阜の計6か所の空自基地に配備されているPAC3は、一部を秋田、岩手両県に移動させ、岩手山演習場や秋田駐屯地、朝霞駐屯地、習志野演習場など計9か所に展開する。
 日本海のイージス艦と東京・千葉から秋田・岩手に至る陸上からミサイルを迎え撃つための「臨戦態勢に入るのだ。危険きわまりない。
PAC3配備を伝達 陸自司令、岩手・秋田に概要説明(河北新報)
対ミサイル誘導弾、首都圏で展開開始 反対運動も(朝日新聞)

 これに加えて米軍イージス艦の寄港がある。米海軍は、MD対応型のイージス駆逐艦ホッパーを舞鶴港に、同じくMD対応型のイージス駆逐艦ステザムを青森港にそれぞれ入港させ、北朝鮮「ミサイル発射」に対応しようとしている。
イージス艦、佐世保に集結 北朝鮮「衛星」発射に備え?(朝日新聞)

 ここで重大なことは、北朝鮮の動きの情報は絶えず米国からもたらされるという決定的な事実である。(1)「ミサイル」への燃料注入と発射準備──米国の偵察衛星による、(2)「ミサイル」発射──米国の早期警戒衛星による、(3)「ミサイル」の追尾──米国のイージス艦による、(4)目標設定と迎撃判断──米国の計算センターによる──すべての段階で、米の情報に依拠しなければならない。米軍が「迎撃対象」と判断し迎撃を指示したとすれば、自衛隊は迎撃ミサイルの発射を迫られることになる。したがって、人工衛星に対する軍事攻撃という日米共同作戦を意味する。それは、専守防衛を逸脱する先制攻撃の危険、集団的自衛権行使の危険をはらむ。北朝鮮は、「迎撃は戦争を意味する」として日本の迎撃に対して強い警告を発している。日本政府は戦争挑発の迎撃方針を撤回すべきである。防衛相は「破壊措置命令」を撤回すべきである。

2009年3月28日
リブ・イン・ピース☆9+25