対中国戦争準備のための軍事費大幅増、長距離攻撃兵器大量購入反対!

軍事費の野放図な拡大反対。勝手な流用反対、軍事費を特別扱いするな
 来年度予算政府案で軍事費(防衛費)は特別扱いで大幅増です。岸田政権はこの軍事費予算を「わが国の未来を拓く」ための「防衛力抜本強化『元年』」予算と呼んでいます。それは以下のように異例づくめの異常な予算です。
@一般会計(歳出)は114兆4千億円で昨年より6兆8千億円増の史上最高予算案ですが、その増加分の大半4兆8千億円は軍事費と「防衛力強化資金」です。後述の「安保関連費」を合わせれば、文字通り軍事費だけが増大した異常な予算です。
A防衛費(米軍再編費を含む)は6兆8千億円でなんと前年比1兆4千億円の増、増加率で26.4%増というかつて例のない急増です。GDP比は1年目で1.2%にまで跳ね上がりました。2020年までの30年間で防衛費増は1兆円に過ぎませんでした。1年間で増加額1兆4千億円というのはとんでもない急テンポの増額です。
B急増する軍事費を確保するために、外国為替資金特別会計からの繰り入れや新型コロナ対策資金からの国庫返納などで4兆6千億円をかき集め、そのうち来年度軍事費に1兆2千億円を投入し、残りを「防衛力強化資金」という過去に例のない予算項目を新設して次年度以降の防衛費への充当の為に確保しました。結局、来年度に実質10兆円を超える費用を軍事費に投入するのと同じことです。返納や繰り入れ金等は本来国民に還元すべきものです。それを何の議論もなく軍事費に投入することはこれまでの予算作成のルールを投げ捨てる独裁的なやり方で許されません。こんなやり方は過去に例がありません。それほど異常な予算です。
Cさらに、従来防衛費関連では国債発行を認めないというルールを破って、防衛費の中で建設や艦船建造に4千億円以上の国債発行を認めました。大量の国債を発行し、軍事費に投入することこそ戦前に天皇制軍国主義国家が戦争に突き進むためにやった常套手段です。
 それだけではありません。防衛省は来年度予算編成にあたって「装備品の調達には複数年度を要するが、1年でも早く、必要な装備品を各部隊に届け、部隊で運用できるよう、初年度に可能な限り契約」を基本方針としました。結果として初年度に装備の大量の「爆買い」が実施されます。新規分後年度負担(新たな装備購入のための借金)は一挙に2.9倍、金額にして7兆676億円に跳ね上がりました。単年度の防衛費(6.8兆円)を超えるような装備の契約(つけ買い)を行うことはこれまで例がありません。しかも実際には1年目に可能な限りと言いながら、2年目以降も同様のペースで新規契約を続けるつもりです。装備の先取りの爆買いで将来のつけ払いを雪だるま式に増やしているのです。

5年間の軍事費急増は人民関連予算の削減や大増税を引き起こす
 この軍事予算案は初めから超突出が前提にされていました。岸田政権や政府与党は初めから5年で軍事費をGDP比2%にまで拡大することを目標にしています。バイデン政権に対する約束だったのです。だから初年度1兆4千億円の増だけではありません。5年後には防衛費だけでさらに2兆1千億円増やして8兆9千億円にし、さらに海上保安庁予算や科学技術関連の一部、空港や港湾、重要インフラ建設費を「安保関連」と称して軍事費の枠組みに組み入れ、これらを合わせて5年後に11兆円にします。GDP比2%を達成するため予算です。この超突出の軍事費増を今後5年間持続するのが前提になっているのです。
 しかし、そんなことは社会福祉や医療、子育て、文教など人民関連予算の抑制、削減をせずには到底実現できません。さらに5年間で文教予算が丸々吹き飛ぶ程の額で軍事費を増やすのですから、大増税は避けられません。この軍事費最優先の方針がいかに人民関連予算抑制・削減に影響を与えているかは、来年度の各省庁の予算が明確に示しています。来年度予算案で初めて防衛費が社会福祉に次いで2番目の規模になりました。国家の軍事化をよく表しています。軍事費や「安保関連項目」などと対照的に、社会保障関係1.7%(うち年金2.5%、医療0.5%、介護2.7%、福祉1.8%、雇用労災-41%)、文教関係費(0.3%)、農林水産(-0.4%)等は抑制されほとんど伸びていません。コロナ禍と物価高騰の下で、本来人民生活保障に投入されるべき金はすべて軍事費に投入されています。極めて反人民的、軍国主義的予算案です。
 政府の計画は、5年間に増加分17兆円を含む増額43兆円を軍事費につぎ込むというものです。前述のようにさまざまな資金をかき集めます。それでも増加分のうち11兆から13兆円しか工面できません。最終年度に4から6兆円足らなくなります。岸田政権はそのうち1兆円を増税(法人税、所得税、たばこ税)でまかなう、国防は国民全体にかかわるから広く負担すべきだと言っています。増税の時期をめぐって政府与党内で意見の対立があります。4月の統一地方選挙で世論の不満を恐れて、実施時期決定を先送りしてごまかそうとしています。しかし、問題はその程度では到底済まないことです。政府の試算通りとしても、6年目以降毎年6兆円の財源が必要になります。今かき集めている財源は一時的なものでしかないからです。1兆ではなく6兆円規模の財源が問題であり、そんな巨額の軍事費を対中国の戦争準備のために投入することの是非こそ問われなければなりません。

対中攻撃力増強=敵基地攻撃兵器の大量装備に反対
 来年度軍事費の最大の柱は「スタンドオフ防衛能力」、つまり中国を攻撃する兵器=敵基地攻撃兵器の大量かつ大急ぎでの購入です。12月に閣議決定した「国家防衛戦略」は「5年後の2027年度までに、わが国への侵攻が生起する場合には、わが国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつこれを阻止・排除できるように防衛力を強化する」としています。つまり、5年後には中国と戦争になることを想定して、実際に戦争できる戦力の確保を提起しているのです。実際に戦争を戦うことを現実に想定して軍事計画を立てるのは初めてのことです。メディアや野党は岸田軍拡が「敵基地攻撃能力」保有に進むことで憲法9条に違反すると問題にします。しかし、さらに重要で決定的なのは、攻撃能力一般ではなく、中国と戦争をする、あるいは戦争になっても闘えることを目指して軍備増強をしていることです。政府は「国家防衛戦略」の中で「専守防衛型」から相手の戦力に応じて対抗する「脅威対向型」に戦略変更するしています。要するに中国を仮想敵国として戦争準備計画を進めるというのです。そのことをメディアは取り上げませんが、これこそが問題なのです。中国と戦うつもりで武力を振りかざす軍備増強をすることそのものが憲法違反であり、戦後の日本の在り方を根本的に変えるものです。
 防衛力整備計画では5年間に軍事費を2倍にする計画にも関わらず、自衛隊員の増員は行わないとされています。つまり、22年度当初予算で42%、2兆2千億円を占める人件・糧食費は固定したままで、それ以外の装備費、維持費、開発費等に今後5年の軍事費増加分すべてを投入する計画です。だから人件・糧食費以外の予算は22年度の3兆円が5年後には7兆円に増大します。2.5倍です。すでに初年度の装備品等購入費は契約ベースで前年比1.8倍の2兆355億円に、弾薬の取得費(契約ベース)は前年比3.3倍に急拡大しています。つまり、岸田内閣の来年度防衛予算は対中戦争に向けて兵器・弾薬の爆買い計画なのです。
 兵器爆買いの中心におかれているのが、中国等の基地・作戦中枢を攻撃できる長距離攻撃兵器です。その多くは米国製兵器で米国の軍需産業に巨額の利益をもたらすものです。
 これまで述べたように政府は何が何でも5年後に対中国戦争が戦えるように装備を実戦化するつもりです。既にJSMミサイル(射程500キロ)に280億円が支払われていますが、(納入はまだだ)さらに347億円投入します。トマホーク巡航ミサイル(射程1600キロ)に2100億円です。トマホークは1発2から3億円、500発購入予定といわれていますが、発射キャニスター等を含め、初年度に一挙に購入する異常な計画です。この2つのミサイルは26年度に実戦配備予定です。さらに12式地対艦ミサイルの射程延伸(1000キロ)と実戦装備に1277億円。陸上配備型は26年から配備開始。空中発射、海上発射型の実戦配備も順次進める計画です。まだ開発が終わっていないミサイルを量産・配備まで予算措置するのも例のないやり方です。射程900キロのJASSM巡航ミサイルも27年度装備を目指して導入されます。防衛省は配備数を明らかにしていませんが、トマホーク500発を含め1000から1500発もの大量のミサイル導入を狙っています。さらに次世代の、より撃墜が困難な極超音速ミサイル研究(580億円)、「島嶼防衛用」高速滑空弾(500億円)、同能力向上型開発(2000億円)等、さらには次期戦闘機開発、レーザーやレールガンの開発、無人装備開発等もどんどん進める計画です。研究開発費(契約ベース)は前年比3.1倍、9千億円に達しています。
 JSM、JASSM、12式改を搭載するためのF35等の機体、艦艇の改造費もふくまれ、あらに陸上型計画が放棄された「イージスアショア」を艦載化する大型イージス艦建造も計上されています。ウクライナ戦争の教訓として、長期にわたって戦争を続け、強烈な攻撃に耐えるためとして、弾薬備蓄増強などを含む継戦能力関連は3.3倍です。司令部の地下化や航空機用シェルター等よりリアルな戦争を想定した装備導入を進めています。

中国との戦争ではなく平和的に共存する道を追求しよう。
 通常国会では来年度予算案をめぐって議論が始まります。これまでの経過を見る限り、議論は「中国の脅威」を前提にして、それに「対抗する」軍拡の財源をどうするか、増税をいつ、どの規模で行うかなど極めて矮小化された形でしか取り上げられていません。とりわけ野党の大半が「中国の脅威」の認識では大なり小なり政府と同調して、結局政府の軍拡そのものに同調すること、野党の翼賛化が重大な問題です。その間違った認識を世論と運動の力で押し返し、政府に大軍拡の中止を迫ることが必要と考えます。
 事柄の本質は、@市民の生活を犠牲にして、人民関連予算を抑制し、増税をして大規模な中国に対する戦争準備を行うか、それともA唯一の平和友好条約締結国で、最大の貿易相手国である中国と平和的共存と協力を目指して外交的努力を行い、戦争を回避し平和を維持し続けるか、どちらを目指すのかということです。
 宣伝される「中国の脅威」や反中国プロパガンダはますます悪質になっています。その例は「コロナ大爆発説」や「新疆ウイグル強制労働説」等に明らかです。私たちは事実に基づかないプロパガンダに反対します。相手に対する悪意を抱かせるプロパガンダこそ戦争への道を準備するものです。戦争を仕掛ける前に、相手を悪魔化して描く手法は「鬼畜米英」から「フセインの大量破壊兵器」「悪魔のようなプーチン」等々に何度も繰り返されています。反中国プロパガンダに対して事実に基づいて反論しながら、岸田政権の大軍拡批判を強めることが必要です。

2023年1月8日
リブ・イン・ピース☆9+25