米日韓キャンプデービッド首脳会談
対中3国軍事同盟化を許すな
米日韓はアジア太平洋にこれ以上対立と紛争を持ち込むな

 キャンプデービッドで行われた米日韓首脳会談の狙いは二つでした。一つは米国が進める中国に対する軍事包囲、政治的経済的包囲を強化し、米日韓の3国体制をその柱に据えることです。もう一つは、日米と米韓の軍事同盟を連携強化し、米日韓の軍事協力を前例のないレベルへと引き上げることです。明らかに3国軍事同盟に向けて進もうとしています。さらに3国は軍事協力の緊密化だけでなく対中の政治、経済包囲での協力強化も決めました。インド太平洋の「平和と安定」を目指すという宣伝文句とは逆に、対中敵視、アジアにおける反中国のブロック化と緊張と対立です。それはこの地域での紛争と戦争の危険を高めるものです。私たちは、キャンプデービッドでの首脳会談と共同声明に反対します。対中軍事同盟化と対中戦争準備、人民生活を犠牲にした大軍拡に反対し、軍事費の大幅削減を要求します。

対中包囲の米日韓3国体制をめざす
 3国首脳会談の「共同声明」(「キャンプデービッドの精神」)は「米日韓パートナーシップの新時代の幕開け」「日米同盟と米韓同盟の間の戦略的連携を強化し、米日韓の安全保障協力を新たな高みに引き上げる」と宣言しました。米国は日米安保、米韓同盟、AUKUS、グローバルNATOなどアジア太平洋で対中包囲の軍事体制を強化しています。キャンプデービッド会談は、米が日韓を従えて3国協力体制を強化し対中包囲戦略の柱に据えるものです。
 バイデン大統領は記者会見では「中国に向けたものではない」と言いましたが、大嘘です。「共同声明」は南シナ海に関して「中国による不法な海洋権益に関する主張を後押しする危険かつ攻撃的な行動」と名指しで批判しています。さらに声明には「地域の平和て及び繁栄を損なうルールに基づく国際秩序と整合的でない行動への懸念」「インド太平洋地域の水域におけるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する」「台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認」など中国批判の常套句がちりばめられています。「共同声明」は、中国を明確に対決の対象にしたものです。
 従来、米韓同盟は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との対決を主要な戦略目標にしてきました。日米安保は対中軍事同盟で進めてきましたが、日韓間には軍事協力関係も薄く、対中3国同盟は存在しませんでした。尹政権成立後、韓国政府は対中姿勢を転換し始め、昨年5月に米韓首脳会談で韓国政府は「台湾海峡の平和と安定」という米日の対中国批判のスローガンに唱和するようになりました。バイデン大統領はこの期に韓国を巻き込んで3国の対中同盟にするつもりです。岸田政権も、その急先鋒として積極的役割を果たそうとしています。韓国は日米のように「中国を戦略敵」と認定していませんが、中国を仮想敵とする軍事態勢に引き込もうというのです。3国首脳会議はアジア太平洋で冷戦の火だね、新たな冷戦に向かうラッパを吹き鳴らすことでした。
 もちろん、標的は中国だけではありません。「共同声明」は北朝鮮の完全な非核化、弾道ミサイル計画の廃棄を強調しています。そのために、北朝鮮制裁の新たなワーキンググループの立ち上げを確認しました。朝鮮半島の非核化をめぐって米朝交渉が行われている時には、米は中国に協力を求めました。今では中朝双方を仮想敵とした3国同盟に踏み込もうとしています。

米日韓3国の軍事同盟化を許すな
 「共同声明」は歴史上はじめて米日韓の実際の軍事協力を新しい高い段階に引き上げ、3国軍事同盟化に向かわせようとしています。これまで日韓の直接の軍事協力は極めて限定的で、逆に軋轢と対立に満ちていました。レーダー照射事件、日本からの対韓制裁、秘密軍事情報保護協定GSOMIA失効等で共同訓練どころか観艦式への参加さえできない状態でした。その原因は日本政府が天皇制軍国主義日本の植民地支配に対する謝罪・反省や補償を誠実に行わず、開き直って韓国政府に屈服を要求することにありました。韓国人民の怒り、反感が日韓の軍事協力を阻んできました。
 バイデン大統領と米国は、世界的な軍事覇権維持の一環として、米日韓の軍事協力関係を立て直し、自分の支配下に置き、中国との対決に利用しようとしています。岸田首相と連携して尹政権に対日批判を取り下げさせ、戦後補償で開き直った日本政府の要求をのみ込ませ、3国軍事協力と同盟化の方向へと進めさせました。「共同声明」は「3国の共通の利益、安全保障に対する挑戦、挑発、脅威」に対応を連携し、迅速に協議する枠組みを作り、軍事同盟に近づいています。さらに「3国が領域横断的に、またインド太平洋及びそれを超えた地域において協力を拡大する」とアジア太平洋だけでなく、グローバルな形で行動を強める軍事協力強化をめざしています。
 3国軍事同盟化を目指した軍事協力強化の動きが目白押しです。@安全保障に関して3国政府の迅速に協議を行う体制の確立。A年1回の米日韓首脳会談定例化。外務、防衛、国家安全保障、さらに財務や経済産業担当の3カ国間定期協議化。B米日韓共同訓練の定例実施。C対北朝鮮でのミサイルデータのリアルタイム共有や軍事情報共有の強化。D対北サイバー活動でのワーキンググループ設置等々。これまで米軍を仲介としてしか結べなかった日韓間を直接、定期的に連携させ、米日韓3国の情報共有と意思決定、軍事協力強化を共同歩調で進むことを追求しています。3国軍事同盟に向けて進むことを目指していることは明白です。
 この3国同盟は核軍事同盟です。日本と韓国に対して米国は「拡大抑止」のコミットメントは強固だと核抑止力を強調しています。つまり米国の核戦力を背景にして、それを脅しの手段として中国や北朝鮮を脅し、圧力を加え、3国の軍事同盟への結束と従属を実現しようというのです。言うまでもなく核兵器禁止条約にも核廃絶にも逆行するやり方です。

「経済安全保障」でも対中結束と同盟化を追求
 「共同声明」の内容は、軍事分野での協力強化にとどまりません。「安全保障上のパートナーシップを深化させると同時に・・・経済安全保障及び技術の分野においても強固な協力を築きあげる」としています。3国政府は経済、金融、貿易などの分野でも対中対決とその為の協力強化を打ち出しています。米はすでに日本と共に半導体規制に踏み切り、さらに投資制限、サプライチェーンでの中国外し、デリスキング等を進めています。「共同声明」は、この政策に従って3国でのサプライチェーン早期警戒システム試行、軍事技術転用可能な技術の輸出監視など対中強硬策での協力強化を打ち出しています。
 さらにASEAN、島嶼諸国との協力と連携の追求を確認し、これらアジア太平洋諸国を「自由で開かれたインド太平洋」に取込み、中国から切り離すことを狙っています。フィリピンに中国との領土紛争をけしかけ、米日豪比の共同演習を行い、あるいはベトナムを標的に中国との切り離しを画策しています。中国外務省の報道官は「アジア太平洋地域は平和と発展の高地であり地政学的ゲームの部隊になってはならない」と警告していますが、まさにこの地域を舞台に対立と分断を持ち込み平和と発展を妨げるものです。

岸田政権は対中対立を煽るな。平和共存と対話外交に転換せよ
 米日韓の3国が進めようとしている軍事ブロック化、経済ブロック化は対中包囲、中国外しの政策です。米国はウクライナ戦争を期にロシア制裁に加わるかどうか、米につくのか否かで閉鎖的で排他的なブロック化を進めようとしています。米日韓、さらにAUKUS、フィリピン、さらにASEANの自陣営への引き込みの画策です。これらは必然的に軍事的対立、紛争だけでなく、地域の経済的協力関係を分断を持ち込みます。「自由な太平洋」といいますが、実際には経済協力から中国を除外し、協力関係をずたずたにするものです。戦争の危険を増大させるだけでなく、経済に打撃を与えずにはおきません。
 それだけではありません。好戦的な戦争のラッパは吹き鳴らされています。自民党麻生副総裁の「台湾有事」に「戦う覚悟を持て」という呼びかけは、岸田政権の政策の一環です。さらに日米による新型迎撃ミサイルの共同開発、日米伊による次期戦闘機共同開発、そしてこれら共同開発した殺傷武器の輸出解禁へと踏み出そうとしています。岸田政権の政策−−来年度概算要求で7兆7千億円に達する大幅増の軍事費と対中攻撃力強化の軍拡、政治反動、戦争する国家つくり最優先等々−−それがもたらすのは、国民生活全体への打撃と破壊、対中経済協力関係の破壊、日本が発展から取り残される道です。しかし、政府は2027年に戦争を起こすことを前提にその準備をやめようとしません。破滅的な軍拡と戦争準備を絶対にやめさせなければなりません。
 今年は日中平和友好条約45年です。二度と再び、対中戦争を引き起こしてはなりません。日中関係は平和共存と友好協力以外の選択肢はあり得ません。日本政府は侵略と植民地支配を真摯に反省し、謝罪を行うべきです。日本が侵略し、植民地支配した中国と朝鮮をはじめアジア諸国との平和共存と協力、相互理解を目指さなければなりません。岸田政権に対し、中国敵視と対中戦争準備、米日韓軍事同盟強化をやめ、平和共存政策に転換するよう要求しよう。

2023年8月29日
リブ・イン・ピース☆9+25