安倍政権の「2020年9条改憲」阻止の運動を
(朝鮮半島危機を煽るのは誰か?安倍政権は戦争をもてあそぶな!5.14緊急集会より)

(1)安倍首相の改憲方針転換
・安倍首相は5月3日、日本会議系の集会にビデオメッセージを送付。同日の読売新聞は安倍首相のインタビューを掲載。それらの内容は、
 (1)憲法9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む
 (2)義務教育の無償化に加え、高等教育についてもすべての国民に開かれたものとする
 (3)オリンピックが開催される2020年を新しい日本の出発点とし、この年を新しい憲法が施行される年にしたい
・しかし、国会では「総理として言ったのではない」という理由で説明を拒否。「読売新聞を読め」と前代未聞の答弁。総理と総裁を使い分け、行政権力(内閣)の長たる安倍首相が、立法府(国会)に対して期限と内容を指定して実行を迫る。議院内閣制を無視し議会制民主主義の形式すら破壊するやりかた。
・共謀罪などに続き、またしてもオリンピックの政治利用。ヒトラーをも思い起こさせる手法。
・安倍首相の狙いは、
 (1)自らの任期中に改憲を実現し、改憲首相として名を残す。2018年12月の衆院議員の任期満了までには解散・総選挙が必要。そうすれば2/3を割り込む可能性。改憲勢力で2/3を占める今と次の任期中に改憲を成し遂げるには、時間が迫っている。「お試し改憲」をするほどの余裕はない
 (2)憲法審査会に対する恫喝。与野党の対立で膠着状態に陥っている憲法審査会に対し、強権的に割り込み、改憲を主導
 (3)公明党、維新の会の取り込みを優先した「現実路線」。「国防軍」、9条本体改定への世論の支持が少ないのを見越しての方針転換。9条1・2項維持と「加憲」で公明党の支持を見込む。高等教育無償化で維新の主張を取り込む。民進党の分裂も誘う
 (4)安倍首相の支持率が高いうちに押し通す。安倍首相自身の疑惑でも、相次ぐ閣僚の暴言、不祥事でもあまり下がっていない
 (5)共謀罪、森友疑惑などから目をそらす
・改憲という、日本の将来にわたる国政の根幹の問題について、安倍首相が自らの都合によって日程を決めるという、傲岸不遜。


(2)9条改憲
(a)
・憲法9条は、1項で戦争と武力による威嚇又は武力の行使の放棄、2項で陸海空軍その他の戦力の不保持、国の交戦権の否定、を規定している。自衛隊は憲法9条違反。
・安倍首相は、「自衛隊の存在は国民に支持されている」とし、これを憲法に書き込む必要がある、とするが、これはごまかし。国民の多くが容認しているのは「専守防衛」と「災害救助」のための自衛隊。しかし、現実の自衛隊はこれとは大きく異なる。特に、安倍政権下での自衛隊は、戦争法強行と集団的自衛権行使解禁によって、米軍と一体となった侵略的軍隊という性格をますます強めている。自衛隊発足時の自衛隊、対ソ冷戦時代の自衛隊とも、冷戦終焉後のまだPKO法が施行された当初の自衛隊とも、大きく異なる。安倍首相の改憲は、こうした自衛隊を合憲にする。
・自衛隊が「専守防衛」と「災害救助」のための部隊という認識は誤りであり、一貫して米と一体となった侵略的な軍隊というのが基本的な性格。われわれは自衛隊そのものに反対する。しかし、安倍首相の9条改憲に対抗するには、現在の侵略性をますます明白にしている自衛隊の実態を強調する必要。

(b)
・解釈改憲で、侵略的軍隊としての強化が進んでいるのに、さらに明文改憲にこだわるのは、今でも憲法9条が自衛隊の活動を縛っているから。戦争法においても制約は残さざるを得なかった。南スーダンPKOからの撤退もそれゆえ。憲法9条がこのままであれば、自衛隊の海外派兵はこれからも違憲訴訟の対象になるし、戦争法自体も憲法違反が訴えられている。
・集団的自衛権まで認めている自衛隊を憲法に書き込むことは、現状の自衛隊に戦争法で認められたありとあらゆることを認めること、戦争に関する一切の制約を取り除くことを意味する。米日が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する軍事的先制攻撃の戦争挑発や恫喝を前面に押し出している現在、そのような自衛隊を憲法で保証することは極めて危険。

(c)
・現行憲法9条の平和条項は、アジア・太平洋戦争の反省の上に作られたもの。天皇制軍国主義日本の侵略によって生み出された朝鮮・中国、アジア・太平洋の民衆の数千万人の犠牲の上に、侵略に駆り出された日本の若者や空襲や原爆によって殺された大勢の民衆の犠牲の上に、作られた。そして施行以来70年、反戦平和運動の長い闘いの歴史の上に、守られてきた。9条を変えると言うことは、この反省を忘れると言うこと。それを破壊するのはとてつもなく大きい。

(d)
・安倍首相は「自衛隊が違憲」と指摘されることを逆手にとって、「自衛隊を明確に憲法に位置づける必要がある」とし、改憲の必要性を主張する。
・しかし、今必要なのはむしろ現行憲法の平和条項を断固として守り抜くこと。戦争挑発武力による威嚇をおこなっているという現実に合わせて憲法を変えるのではなく、逆に、この平和条項の現実への適用を推し進めること、平和的外交的解決に全力を挙げることこそが重要。


(3)「高等教育の無償化」
・高等教育の無償化は憲法の問題ではなく、やるつもりがあればできる政策の問題
・維新の取り込みが目的。本当にやるつもりなどない。安倍首相自身は「高等教育の無償化」という言葉も使っていない。
・改憲の手段であって本当にやるつもりなどないことは、自民党政権が何十年にもわたって逆行することをし続けてきたことからも分かる。
 (1)大学授業料を長年にわたり値上げし続けてきた
 (2)奨学金を学生を借金漬けにするサラ金化してきた
 (3)民主党政権の高校授業料無償化をバラマキだと糾弾し、所得制限をかけた
 (4)同じく「子ども手当」をバラマキだと非難し、廃止した
 (5)子どもの貧困対策を何もしていない
 (6)教育への公費負担費は先進国で最低レベル、など
・すでに国際人権規約の社会権規約第13条で、中等教育・高等教育の漸進的無償化が要求されている。これまでサボタージュしていた方が問題。
・無償化を言うのであれば、現行の切り縮められた「無償化」を全面的に改善すべき。今は、「義務教育無償化」の下で授業料と教科書だけが無償化され、給食費、制服・体操服代、修学旅行代などその他諸費用が有償化のまま放置されている。高校無償化から排除されている朝鮮学校を対象にふくめ、不支給となったその他の補助金も交付すべき。


(4)安倍改憲の強さと弱さ。運動の力で阻止しよう
・安倍首相は自民党に改憲論議の加速を指示。今後集中的にキャンペーンを行って、9条改憲に世論を誘導しようとする危険。
・自民党内からは、「リベラル派」も含め、大きな反発は表面化していない。小泉進次郎など若手も「当然」と支持。日本会議など極右的部分も歓迎、支持。経団連会長も早速首相を支持。維新の会も積極評価。
・しかし、9条2項を残し3項を追加するという手法を打ち出したのは、安倍政権の弱さでもある。本来やりたい9条2項の改悪では押し切れない。1項・2項と3項の矛盾、自民党改憲案との矛盾、これらについて説明できないという弱さ。国会での説明を過剰なまでに避けたのもそのため。
・自民党が一枚岩という訳でもない。一部から異論も表面化している。自民党改憲草案を無視して直接出した手続きに石破などが不満を表明。岸田外相は9条を「今すぐに改正することは考えない」。衆院憲法審査会幹事である船田も慎重。公明党は井上幹事長やの漆原中央幹事会会長が慎重姿勢を表明。
・舞台となる憲法審査会が安倍首相の思惑通り進むということは、少なくとも当面はない。維新以外の野党が強く反発。5/11の衆院憲法審査会は開催見送り。同日の審査会幹事懇談会では、自民党側が、「安倍発言は、党に向けて示したものと理解」「審査会の具体的スケジュールは各党各会派の協議で決定し、『20年施行』には縛られない」「審査会では今まで通り与野党の合意形成を進める」との3点を約束させられた。
・一方、安倍政権内には、議論を強行に進めるため、審査会幹事を差し替えてようという動きもある。
・なによりも、世論調査では、憲法改定全体に対してしては賛否が拮抗するものの、9条については反対が多数。最終的には、世論と運動の力で反対の声を強められるかどうかにかかっている。


 第二章 戦争の放棄

第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

2017年5月14日
リブ・イン・ピース☆9+25