4/13講演会 敗戦後80年 対中戦争ではなく日中友好を
大阪城に中国の狛犬がなぜ? 私の日中友好運動
 報告

 4月13日、リブ・イン・ピース☆9+25の主催で、「敗戦後80年、対中戦争ではなく日中友好を!」と銘打って「大阪城に中国の狛犬がなぜ? 私の日中友好運動」講演会を行いました。講師には大阪城狛犬会の伊関要さん、山橋宏和さんを迎え、定員30人の会場が溢れ立ち見が出るほどの盛会となりました。

 伊関さんは「大阪のこま犬−歴史の真実と平和・日中友好のメッセージ」と題して話されました。伊関さんは、はじめなぜ大阪城に中国の狛犬があるのかと思った、と話し始めました。調べてみると対中戦争の下で「暴支膺懲」のスローガンの下に1937年に天津市庁舎の前にあったものを日本軍が略奪してきたものでした。その後、戦利品として展示され、国防教育、戦意高揚のプロパガンダに使われた。盗んできた文化財をなぜ返さないのかと思い、1983年に返還を求めて大阪市に返還を働きかける市民の運動をはじめた。市民の声に押されて大阪市が行った返還の申し出に、中国政府が「友好の証」として大阪市に改めて寄付することになり、略奪と戦争の負の遺産を友好と将来のための狛犬とすることができたのです。しかし、寄付を受けた大阪市の対応は極めて不十分のもので、設置された説明板には、侵略戦争の最中に略奪してきたものであることも、市民の返還運動が評価されて平和と友好の証として寄付されたことも表示せず、二度と侵略戦争を起こさないようにしようとの決意もなく、ただ単に友好のために中国が寄付したとしか書かれていませんでした。伊関さんは、侵略の歴史の真実を残らず伝え、再び過ちを起こさない決意なしには真の日中友好は築けない、市民の力で正しい由来の記された説明板設置と歴史を正しく伝える活動を続けていきたいと力を込めて話されました。

 中国領事館のアドバイザーでもある伊関さんは、中国が10年以上前から「人類運命共同体」という考えを提唱し、そのために取り組んでいることを強調し、強国が覇権を握り一人勝ちする社会ではなく、それぞれの国が共に協議し、建設し、共有し合う国際社会、平和と相互尊重を追求していると指摘しました。日中関係に「運命共同体」を当てはめれば、隣国中国との永遠の平和を堅持し、相互尊重と相互信頼を追求すること、正しい歴史認識を気づき、共通理解を促進し、冷戦思考を排除すること、そして互恵的な協力を深化させ、発展・共に企図し「分断」に反対することが大切だと強調しましした。日中はまさに運命共同体であり、平和共存、世代を超えた友好、互恵関係を共に発展させることが両おっ区の人民の根本利益なのです。
 その上で中国に対するメディアの報道のひどさに言及しました。たとえば不動産バブルの問題で中国の危機を強調するが、90年代の日本の不動産価格の下落は80%に及ぶのに、現在の中国の下落幅は30%に過ぎない事実をあげ、また中国が政府のコントロールの下で計画的に調整をしており、そこに資本主義の元でも無政府主義的対応と異なる社会主義の優位性があると強調されました。

 続いて、山橋宏和さんから「略奪文化財返還運動」(歴史経過と今後の課題)とのタイトルで話をされました。日本が中国の侵略戦争で略奪し日本へ「戦利品」として持ち帰ったのは、狛犬だけではなかった。大阪天王寺にある大阪市立美術館には数々の「戦利品」がいまも常設展示されているという話には多くの参加者が衝撃を受けました。世界遺産に指定されている中国の河南省にある龍門石窟に彫り込まれた仏像群の一部の頭部が切り取られている。それを日本軍が日本に持ち帰って、それが今なお返還されることなく平然と大阪市立美術館や東京国立博物館に展示されている。奈良の大仏の頭部が切り取られ中国の美術館に展示されたていたらどう思うだろう。欧米の博物館では、植民地時代のアフリカやアジアの略奪品が長らく展示され、返還が問題にされはじめているが日本は全く問題にされていない。

 日本軍による中国文化財の略奪は、組織的に行われた。1894年秋の日清戦争開戦直後、宮中顧問官兼帝国博物館総長の九鬼隆一が政府や陸海軍に送った文書「戦時清国宝物蒐集方法」には「日本文化固有の性質を明らかにするために中国朝鮮の文化財を収集して比較対象することは極めて重要である」として「戦時には平時には得ることができない名品をえることができるし運搬も容易」「名品を破壊から救うため」などと記載「戦争の名誉を伴い国威を発揚できる」して侵略戦争を機会に強奪行為の実行を提言していた。その方法は、軍隊の指揮の下で兵員が協力し収集員は学者(有識者)がおこないこと、収集品は「帝室または帝国博物館」の所蔵品とすることまでが指示された。
 オランダの国立世界文化圏博物館のヘンリッタ・リッチは、無条件での返還を促していることについて「(返還のために)支配されていた側が不本意な略奪だったと証明しなければならないなら、それは不平等な関係性の繰り返しでしかない。だからこそ、無条件の返還を盛り込むことが非常に重要です」との指摘が紹介されました。まったくその通りだと思います。日中友好を標榜するなら日本政府自らが調査して、中国政府に無条件での返還を申し出るべき話です。

 山橋さんは、さらに中国はアフリカ諸国と植民地支配の苦難の時代を共有していること、「中国・アフリカ協力フォーラム」などを通じてアフリカ諸国の自律的発展のために、自らの経験や資金、技術を提供していること。それは米欧日と異なるアフリカ援助の考え方であること。中国のアフリカへの影響力の拡大をみて、ヨーロッパの最近の略奪文化財の返還の背景は、 自分たちの影響力を維持したいという打算があるとの指摘がありました。
 また、中国の戦犯裁判とその後の帰国者たちの平和活動を詳しく論じた 『新中国の戦犯裁判と帰国後の平和実践』 (石田隆至、張宏波共著 2023年社会評論社刊)が紹介されました。 中国の人々へ残虐な行為をはたらいた日本軍兵士にたいして中国はどのように対応したのか?日本人にほとんど知られていない事実が明らかにされている。是非読むべき本です。戦後の保守政治家の中にあっても日中交流の促進をはかった石橋湛山の行動や1950年代-1960年代にかけて日中共同声明や日中平和友好条約につながる 経済界や市民による民間交流があったことの紹介。そして、いまの日中関係の悪化は、歴史を顧みない、意図的な日本政府の中国敵視の政策とそれと同調する主要メディアの嫌中宣伝にあって、山橋さんは、私たち市民が歴史を学び、民間主導で日中友好の交流を進めていくことの意義を強調してお話を締めくくられました。

2025年4月21日
リブ・イン・ピース☆9+25