朝鮮学校を無償化から排除することに反対する
(5/23リブインピース@カフェ報告)

(1)高校無償化とは
・国による公立高校無償化、私立高校生への支援
 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」
  国公立(全日制) 年11万8800円
  私立 年収250万円未満の世帯 年23万7600円
     250〜350万円の世帯  年17万8200円
・大阪府による私立高校無償化
 「授業料軽減補助金」最大年35万円、朝鮮高級学校も含む
     ↓
 「授業料支援補助金」施設整備費などを含め最大年55万円、国の無償化に上乗せ、低所得者は無償化
・この2つの無償化から朝鮮学校を対象外にしようというもの
 大阪府には、小中を含む府内の朝鮮学校11校に支給してきた「外国人学校振興補助金」(生徒1人当たり年間約7万円)があるが、これまでも支給を取りやめようとしている。

(2)除外の動きと現状
昨年秋 民主党が高校無償化を公約し総選挙に勝利。この時点では朝鮮学校も含むことが前提
昨年末 10年度予算案決定。朝鮮学校を含む無償化の予算を計上
昨年末 中井拉致担当相が川端文科相に朝鮮学校を除外するよう要求
1/29  高校無償化法案を閣議決定
2/21  中井拉致担当相が朝鮮学校除外を要求したことが報道される
2/22  鳩山首相「除外の方向で検討」
2/23  鳩山首相「法成立後に文科省令として決める」
3/12  無償化するかどうかを判断する第三者機関設置方針を表明
3/16  高校無償化法案衆議院通過
3/31  高校無償化法成立
4/30  無償化対象校を公表。朝鮮学校は対象外(中華学校は対象)

3/2   橋下知事が朝鮮学校除外の意志を表明
3/12  橋下知事が大阪朝鮮高級学校と生野朝鮮初級学校を視察

・鳩山首相の対応は、例によってブレているように見えたが、政府の中で排除を主導した。朝鮮学校排除という結論が先にあり、そのための理屈を探していただけ。
・橋下知事は、無償化の条件として「朝鮮総連と一線を画すこと」等を要求し、不当にもボールが朝鮮学校側にあるような形になっている。

(3)度重なる差別発言
・橋下
 「北朝鮮は不法行為をしているという意味で暴力団と同じだ」「学校経営に暴力団関係者がかかわっていたら税金を投入できないのは府の規則でも決まっている。朝鮮学校と朝鮮総連に関係があるなら、この規則に当てはまる」(3/3)
 「不法国家の北朝鮮と結びついている朝鮮総連と関係があるなら、税金は投入できない」「民族差別だという指摘があるが、朝鮮民族が悪いわけではない。北朝鮮という不法国家が問題。それはドイツ民族とナチスの関係と同じだ」「不法な国家体制とつきあいがあるなら、僕は子どもたちを取り戻し、ちゃんと正常な学校で学ばせる。そうしないと朝鮮の皆さんに対する根深い差別意識が大阪府からなくならない」(3/10)
・中井
 「お金が朝鮮総連、金正日にいくじゃないか。何で僕らの税金でそんなことをするのか」「授業を見ても仕方がない。放課後に、全校生徒に主体思想、先軍思想の洗脳をしている」(4/25)
・産経新聞
 「北、朝鮮学校に460億円送金 昨年も2億…高校無償化に影響」(2/11)
 「北朝鮮が過去半世紀以上にわたり、在日朝鮮人に民族教育を行う各種学校「朝鮮学校」に対して総計約460億円の資金提供を実施し、昨年も約2億円の「教育援助金」を送金していたことが10日、明らかになった。」 →ずっと以前から公開されていたのに
 「朝鮮学校 無償化除外へ知恵を絞れ」(2/23)
 「【主張】朝鮮学校 拉致事件「反省」は方便か」(3/13)
 「朝鮮学校教科書の日本語版を出版 目立つ個人崇拝 無償化論議に一石」(4/15)
・「在特会」などの民族排外主義の横行と軌を一にした動き。そうした民族差別・人権侵害を封じるどころか、それに便乗し助長する。しかも、これらの発言がマスコミ等で全く問題にされない異常さ。

(4)「第三者機関」で何を審査するのか
・高校無償化法は、「各種学校のうち高等学校の課程に類する課程を置くもの」は無償化の対象と規定。課程というのは、授業時間数、生徒数など、形式的・外形的なもの。
 ex.専修学校設置基準──授業時数は、学科ごとに、一年間にわたり八百時間以上、一の授業科目について同時に授業を行う生徒数は、四十人以下。
・自治体の各種学校認可や助成金手続の際に提出されているカリキュラムで、朝鮮高級学校の教育課程が高等学校に相当することは確認できる。それ以上の条件を付ける法的根拠はない。
・ところが、無償化されるための「基準」は、(1)日本の高校と同等の課程であることを本国で認められている、(2)国際的な評価機関で認定を受けている、などとされている。このやり方は、2003年に外国人学校に対する大学入学資格を弾力化した際に、朝鮮学校を排除したのと同じ。この時も曖昧な基準を使うことで、台湾系の中華学校は本国と国交がなくても認め、朝鮮学校は認めないという差別を強行した。
 ※現在でも、朝鮮学校を卒業したというだけでは大学受験資格は認められない。大学の個別審査によって高校卒業者と同等以上の学力があると認められて初めて、受験資格を得られる。「朝鮮学校卒業生も現在では大学受験を認められるようになった」というのは、厳密に言うと間違い。
・したがって、「第三者機関」での審査も朝鮮学校排除の理屈付けとなく可能性が高い。そもそもいつ発足するのかさえ不透明。このまま店ざらしにされる恐れ。
・また、法によって「高校に類する」ことを求められているのは、教育の「課程」であって教育「内容」ではない。意図的か無自覚にか、「課程」と「内容」が混同して報じられることによって、教育内容への介入を正当化される危険がある。

(5)除外が許されない理由──民族教育を保障する責任
・「朝鮮学校が日本の学校と変わらないから無償化すべき」と言うべきではない。たとえ日本の学校と違っていても、無償化しなければならない。
・日本政府と地方自治体には民族教育を保障する責任がある。
 国際人権規約B規約、子どもの権利に関する条約、人種差別撤廃条約
 憲法第26条1項(教育を受ける権利)、第14条1項(平等権)
・3/16国連人種差別撤廃委員会の日本の人権状況についての報告書──朝鮮学校を高校無償化の対象から除外する動きについて懸念を表明。
 在日コリアンや中国人の子弟の学校が「公的支援や補助金などの面で差別的扱いを受けている」と指摘し、朝鮮学校の除外を「子どもたちの教育に差別的な影響を及ぼす行為」の一つとして言及し、日本政府に対して「教育の機会提供に一切の差別がない」状態を確保するよう勧告。
・教育内容にを条件をつけてはならない
 無償化するかどうか教育内容をチェックして決めるというのは、民族教育への介入。朝鮮学校独自の教育内容(ex.朝鮮語、日本による植民地支配と抗日闘争を学ぶ歴史など)を理由に無償化から排除するのは許されない。北朝鮮や朝鮮総連との関係とか肖像画とか、教育の内容と関係のないことを要求することも許されない。
 ←→「府のお金がほしいなら、府民が納得する振る舞いをして」(3/3橋下)
・そもそも各種学校としていることが不当。民族教育を保障するのであれば、学校教育法上の一条校とし、日本の学校と同等の支援を、国や地方自治体が行うのが当然。